雪の晩、飲み屋街の裏で和服の女将が
二月の、粉雪の舞う晩のことであった。なじみの店が満席で、仕方なく横丁を二本ほど北へ歩いた。息が白く、靴底に雪の軋む音だけが響く、静かな夜だった。時刻は十一時を回っていたと思う。
裏手の月極駐車場の脇を通りかかったとき、車の陰に人影が見えた。和服姿の五十絡みの女性である。髪をきちんと結い上げ、羽織の肩に粉雪を載せたまま、車の陰にしゃがみ込んでいる。どこぞの店の女将であろう。帯の締め方、しゃがんでいてなお伸びた背筋に、水商売の年季が見えた。
酔客の介抱かと思ったが、そうではない。周囲に人はいない。裾を両手で押さえたその姿勢と、やがて聞こえてきた静かな水音で、こちらが察するには十分であった。雪の白さの中に、湯気がうっすらと立ち上るのが見えた。粉雪の落ちる音すら聞こえそうな静けさの中で、その音だけが、妙にはっきりと耳に届いた。
私は動けなかった。見てはならぬ、立ち去るべきだと頭では分かっている。だが足音を立てれば気付かれる。結局、来た道の途中で立ち止まったまま、息を殺して終わるのを待つ形になった。我ながら言い訳がましいことである。
閉店後、自分の店の便所は掃除を済ませてしまって使いたくないと云う話を、昔べつの女将から聞いたことがある。磨き上げた便所を朝一番の客に使わせるのが商売人の矜持だと。なるほど、そういう事情かと得心した。家までの道すがら、限界が来たのであろう。プロの女の意地が招いた粗相と思えば、なにやら胸に迫るものがある。
女将が立ち上がり、裾を直し、何事もなかったように歩き出す気配がしてから、私は足音を立てぬよう来た道を戻った。心の臓が、齢に似合わず騒いでいた。
雪の晩の粗相は、雪が隠してくれる。ああいう光景は、見て見ぬふりをするのが横丁の作法である。もっとも、齢六十を過ぎた今でも、あの結い上げた髪と、雪明りに浮かんだ白い足袋の色まで覚えているのだから、わしも大概である。
いや、私も、と書き直すべきか。
― この話は、これにて ―
この話を評価する
平均 3.5(19件)
※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
この話の続きは映像で——野ション・野外放尿の実写作品を価格比較

【華奢薄ボディなギャル系優等生女子あやめちゃん】放課後に自撮り露出する優等生J系を見つけたので… 乃木絢愛
最安 780円〜

【アヘ顔炸裂!白目もカワイイ!ひまりちゃん】放課後に自撮り露出する優等生J系を見つけたので… 小坂ひまり
最安 780円〜

放尿露出 露出した場所に記録を残すお漏らしマーキングデート なな(24) 前乃菜々
最安 2,480円〜
価格比較・レビューは姉妹サイトPeeSearchで(PR・アフィリエイトリンクを含みます)
「小料理屋の常連B」の他の話
横丁の路地裏で見た老婦人の限界という話
私の通う小料理屋は、駅裏の細い横丁の奥にある。赤提灯が三つ、傾いた電柱がひとつ、あとは飲み屋の裏口ばかりという路地である。先週の金曜、店を出たのが十一時前であったか。夜風はすでに秋めいて、酔い覚ましにはちょうどよい冷たさであった。 角を曲が…
関連する話
キャンプ場のトイレが凍結して全員野外派になった夜
1月の山あいのキャンプ場。管理人なしの無料サイト。着いたらトイレの水道が凍結してた。貼り紙一枚。「凍結のため使用禁止」。ドアには南京錠。逃げ場なし。山を下りて最寄りのコンビニまで車で20分。夜中に往復する道じゃない。 利用者はおれ含めて4組…
登山道から外れた茂みで、人妻ハイカーの野糞を目撃してしまった
昨年の秋、単独で低山を縦走していた時のこと。標高900メートルほどの稜線を過ぎ、昼過ぎに水場を探して登山道を少し外れたのがそもそもの間違いだった。落ち葉を踏む音以外は何も聞こえない静かな斜面で、茂みの向こうに見覚えのないザックが置いてあるの…
妻が夜中のキャンプ場で「絶対ついてきて」と震えていた夜
結婚3年目、夫婦でオートキャンプに行った時の話。夜中の2時、妻(29)に叩き起こされた。「トイレ行きたい。ついてきて」。パーカーにレギンス姿、寝ぼけ眼だったのが一瞬で強張った顔に変わっていた。テントの外は虫の声だけが響く静けさで、月明かりが…
夜明けの堤防で常連のタケさんが竿を置いて消えた理由
わしは釣り歴30年になる。堤防には常連というものがおって、タケさん(60過ぎ、いつも渋いベストを着とる、腕は年季の入った日焼けをしとる)もその一人だ。 ある夏の朝まずめ、せっかくの時合いだというのに、タケさんが竿を置いていなくなった。テトラ…