排泄物語

女性警備員本人が巡回中に限界を迎えた日の記録

投稿者: 遊撃の警備員2分で読めます閲覧 1,5633.8(9件)

今回は他人の事案ではない。自分自身の失態を、自戒を込めて報告する。

当直明けの朝5時、最終巡廻の途中であった。当直の夜食に食べた市販の弁当、あれの揚げ物が原因と推定している。B館4階、防犯カメラの角度点検中に、腹部に第一波が来た。この時点では軽微な違和感であり、「巡廻をあと2フロア消化してから降りる」と判断した。この判断が、勤続12年の全経験の中で最悪の判断となった。

5分後、第二波。冷や汗が背中に滲み、点検表を持つ手が止まった。当施設の従業員用トイレは1階防災センター脇のみ。閉館時間帯、来客用トイレは全て施錠済みで、鍵は防災センターにある。つまりどのみち1階まで降りるしかない。エレベーターは省エネ運転で深夜停止中。階段で4フロア。健常時なら2分の距離である。

3階に降りた時点で第三波が来た。これまでと桁が違った。手すりを掴み、深呼吸を3回。腹の中で何かが決壊の準備を始めている感覚があった。2階で歩行が困難になった。一歩ごとに衝撃が腹に響く。階段を降りるという動作が、これほど内臓に負荷をかけるものだとは知らなかった。無線が鳴ったが、出られる状態ではなかった。応答する声を作る余裕すらなかった。膝が笑うとはこのことかと、頭の隅の冷静な部分が他人事のように観察していた。

1階に到達。トイレまで残り約30メートル、直線の廊下である。毎日歩いている廊下が、あの朝は滑走路のように長かった。あと20メートル、あと10メートル。祈りながら、腹を押さえ、途中からは壁に手をつきながら進んだ。ここからの記憶は断片的だが、間に合ったことだけは報告できる。

ただし、正確を期すなら、間に合ったと言い切れるかは判定の分かれるところである。着座の0.5秒前に前哨戦があったことは否定できない。下着については現場で処分の判断を下した。制服は無事である。制服が無事なら勤務は継続できる。無線に出なかった件は「電波状態不良」として処理した。同僚には今も言っていない。

53歳、勤続12年。施設内のトイレの位置と鍵の在処を誰より把握している女が、自分の施設内で遭難しかけた。以上、次の当直の弁当選びへの戒めとして記録する。揚げ物は、もう買わない。

― この話は、これにて ―

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掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。

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