深夜2時の24時間スーパー、駐車場の隅で決着をつけたパート帰りの女性
工場の夜勤明け、深夜2時に24時間スーパーに寄るのが日課の39歳です。夜食と翌日の弁当材料を買うだけの、何もない時間のはずでした。先週の火曜までは。
いつものように駐車場に車を停めてシートベルトを外していると、隣にウインカーも慌ただしく軽自動車が滑り込んできました。停まるか停まらないかのうちにドアが開いて、50代くらいの女性が転がり出てきたんです。文字どおり転がり出て、そのまま店に向かって全力疾走。エプロンをつけたままだったので、たぶん飲食系の仕事帰りのパートさんじゃないかと思います。ああ、トイレだなと。夜勤者には分かるんです、あの走りは。
ところが店の入口で女性が急停止しました。自動ドアの前で数秒固まって、それからUターンしてくるんです。あとで自分も店に入って分かったんですが、その日、店内トイレが深夜清掃中だった。張り紙一枚で人間を絶望させられるんだなと思いました。
戻ってくる女性の歩き方が、行きと全然違いました。内またで、小刻みで、両手でスカートの脇を握って。駐車場の照明の下、顔をくしゃくしゃにして何かぶつぶつ言ってました。たぶん計算してたんだと思います。次のコンビニまで車で何分、いや無理、という計算を。
女性は駐車場の隅の植え込みまで小走りに移動して、フェンスに向かってしゃがみました。決着は一瞬でした。深夜の駐車場に、長い長い水音だけが響きました。哀愁のある背中でした。自分は車内で目のやり場に困って、買い物メモを見つめてました。メモには「たまご」としか書いてなかったので、たまごについて3分くらい考えてました。
で、オチなんですけど。その女性、スッキリした顔で店に入っていって、5分後にトイレットペーパーの12ロールパックだけ抱えて出てきたんです。今まさに紙は要らなかっただろ、と車の中で一人でツッコミました。
夜勤明けの深夜スーパーには、こういう小さなドラマが転がってます。工揚勤めの数少ない役得です。
― この話は、これにて ―
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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