キャンプ場の夜明け前、スコップを持って森へ入る人妻の告白
キャンプを始めて三年になりますが、今日は少々踏み込んだお話を。山奥のキャンプ場ですと、お手洗いがサイトから遠いことがございます。ある秋の朝、夜明け前の四時半に、私はお腹の大きい方の都合で目が覚めました。共用トイレまでは暗い山道を十分。実を申しますと私、この時を少し楽しみにしていた節があるのです。前の晩から、明日の朝はきっと、と予感がありましたから。
主人を起こさぬようテントを抜け出し、携帯用のスコップとペーパーを持って、サイト裏の森へ入りました。歩くたびに下腹の圧が増していき、山道の途中で一度立ち止まって深く息を吐きました。まだ、あと少し先まで我慢しなければ。木々の隙間から漏れる月明かりを頼りに歩を進めながら、私は太ももに力を込めて堪えておりました。冷たい朝の空気が肌を刺すたび、腹の奥の圧が一段強くなる気がいたします。
共用トイレの方角を示す小さな案内板が見えた時、一瞬そちらへ足が向きかけましたけれど、あと十分は歩くと思うと、とても持ちこたえられる気がいたしませんでした。私はサイト裏の暗がりへ引き返し、足元を照らす小さなランタンの灯りだけを頼りに、獣道のような細い踏み跡を辿りました。枯れ葉を踏む音がやけに大きく響いて、心臓の音と重なっているようでした。
規則で焚き火の灰は持ち帰りますのに、こちらは埋めて良いという野営の作法も、考えてみれば不思議なものですね。倒木の陰に穴を掘る間も、下腹の重みと戦っておりました。スコップを持つ手が焦りでもたついて、これ以上は待てないと悟った時、ようやく穴の準備が整いました。
朝靄の中でしゃがみました。腰を落とした瞬間、これまで堪えてきた重みが下腹の奥でどっと解けていくのが分かりました。森はまだ眠っていて、鳥も鳴いておりません。自分の吐く息の白さと、下腹から込み上げるものの重量感だけが、やけに鮮明に感じられました。
冷えた空気の中、自分の体から出るものの温かさと、地面に落ちる確かな重みだけが、妙に生々しく感じられました。長い長い時間をかけて、私は体の隅々まで弛緩していくのを感じておりました。一度、体の奥からまた新しい波が来て、思わず声が漏れそうになるのを、口元を手で覆って堪えました。都会の水洗では決して知り得ない、命の営みそのもののような時間でございます。
終えた後、しばらくその場にしゃがんだまま、森の静けさに耳を澄ませておりました。ようやく体の震えが治まった頃、東の空がわずかに白みはじめていました。木々のシルエットが少しずつ輪郭を持ちはじめる様子を眺めながら、私は自分がとても原始的なことをした満足感に浸っておりました。
埋め戻して土を均す間も、指先にはまだ土の冷たさと、あの安堵の余韻が残っておりました。スコップを丁寧に洗い、ペーパーの包みをきちんとポケットにしまってから、何食わぬ顔でテントに戻りますと、主人が寝ぼけ眼で「早いね」と。ええ、朝の森の散歩ですの、と微笑んでおきました。テントに潜り込んでからも、しばらく心臓の鼓動が普段より速いままだったのを覚えております。妻には秘密の穴がひとつ、あの森に眠っております。
― この話は、これにて ―
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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