冬の河川敷凧揚げと消えた仮設トイレ
冷たい北風が強く吹く1月の午前11時頃、私は遮るもののない広い河川敷にいた。気温は6度しかなく、正月休みの親子連れが凧揚げを楽しんでいるのを見つめていた。 最初の異変は、川沿いの道を歩き始めて30分ほど経った頃の、下腹部を突き刺すような鋭い尿意だった。 「次の橋の下のトイレまであと20分……そこまで持ってくれ」 そう自分に言い聞かせて歩みを進めたが、直前にコンビニで飲んだ冷たいスポーツドリンクが、完全に尿意の引き金となった。
河川敷は広大で吹きさらしになっており、最寄りのトイレは遥か遠くのグラウンド横の仮設トイレしかない。その平原の真ん中という物理的な檻が、私の尿意をさらに刺激し始めた。 最初はお腹をさすってやり過ごそうとしたが、無情にも第ニ波の猛烈な尿意が下腹部を激しく襲った。 冷たい冷や汗が額からタラリと流れ、全身に鳥肌が立つのを感じる。
「ここで漏らしたら、多くの人がいる中で一生の恥を晒すことになる……」 恥ずかしさと焦りから、心臓が爆発しそうなほど高鳴り始める。 チノパン of 中で、両足をぎゅっと交差さえる(させる)ようにして括約筋を極限まで締め付けた。 風が吹くたびにお腹の中で冷たい蛇口が開いたような感覚になり、頭が真っ白になって凧の動きが全く頭に入ってこない。
限界が近づく逆(つれ)に、歩くこと自体が困難になっていった。 お尻の筋肉を限界まで締めつつ、少しでも圧迫を逃がすために腰を浮かせ、身を捩る。 「神様、お願いだから静まってください……」 涙目で風に向かって進むが、時間は信じられないほど遅く進む。括約筋が悲鳴を上げ、決壊寸前の水門のように今にも熱いものが漏れ出しそうだった。
ついに我慢の限界を悟り、私は人通りの途絶えた河川敷の斜面にある背の高いススキの藪の中へと滑り込んだ。 周囲の視線を気にしながらパンツを引き下げ、冷たい枯れ草の上に向けて全てを一気に解放した。 熱いものが流れ出した瞬間のあの全身の余分な力が抜ける感覚と、後ろめたさに満ちたスリルは今でも忘れられない。 今でも冬の冷たい風を直接肌に感じるたび、あの河川敷での極限の恐怖と、股の奥がキュンとする痛みを思い出す。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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