冬の氷彫刻フェスティバルと故障した仮設トイレ
氷の彫刻が展示された2月の夜7時半過ぎ、北海道の有名な広場で開催されていた氷彫刻フェスティバルでのことだ。気温はマイナス5度まで下がり、ライトアップされた氷の美しさに多くの見物客が足を止めていた。私は温かいお茶の缶を手に持ち、ベンチに腰掛けて夜桜と人波を眺めていた。……その時、近くの案内看板の前で立ちすくんでいた女性が目に入った。
年齢は20代後半の会社員風。分厚い白いダウンジャケットに、黒いスキニーパンツを穿いていた。足元は雪用のブーツを履き、大きなマフラーを巻いている。髪はすっきりと一つに結ばれ、小さなショルダーバッグを持っていた。最初は楽しそうにスマホで写真を撮っていたが、突然お腹を抱え込むようにして不自然に動きを止めた。
彼女の様子がおかしいのはすぐに分かった。 両脚をぴったりと揃え、ブーツのつま先に力を入れながら、内ももを激しく擦り合わせるようにしてもじもじと身を捩っているのだ。 極寒の夜風にさらされながら冷たいビールを飲んでいたことで、急激な尿意を引き起こしたようだった。顔からは完全に血の気が引き、額には細かい汗がにじみ、唇を噛みしめて痛みに耐えている。
広場 of 簡易トイレは2台あるだけで、しかもそこは凍結のため故障の張り紙が貼られていた。その逃げ場のない広場という状況が、彼女を精神的にさらに追い詰めているようだった。 見てはいけないと思つつも(思いつつも)、彼女のスキニーパンツ越しに限界を迎えて震える太ももから目が離せなくなり、私の心臓はドクンと激しく高鳴った。
尿意の第ニ波が彼女を直撃した。 「んん……」と喉の奥で息を漏らし、彼女は踵を交互に浮かせながら、括約筋を極限まで引き締めている。 同行者が心配して声をかけるが、彼女は涙目のまま首を振るだけで、一歩も動けないようだった。
ついに限界に達したのか、彼女は同行者の制思(制止)を振り切るようにして歩き出し、お尻をかばうように極端な内股のまま、広場 of 奥にある雪で作られた巨大な展示物の影へと長る(這う)ようにして消えていった。 今でも冬の冷たい風を感じるたび、あの時の彼女の限界の表情と、雪陰に消えていった切迫した気配を思い出して胸が苦しくなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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