初夏のハイキングコースの誤算
青葉が目に眩しい5月の中旬の日曜日、午前11時過ぎの奥多摩の山間ハイキングコースでのことだ。初夏の木漏れ日が美しく、周囲は多くの登山客や家族連れで賑わっていた。最初の異変は、急な登り坂を登り切った直後、下腹部に重くのしかかるような不穏な便意の波だった。朝、駅の売店で買った冷たい牛乳を急いで飲んだことが、このタイミングで私の胃腸を刺激し始めたのだ。
私はその日、黄色の軽量マウンテンパーカーに、グレーのストレッチトレッキングパンツ、そして頑丈な登山靴を履いていた。髪はすっきりと一本のポニーテールに結んでいたが、腹痛による冷や汗で額の生え際からだらだらと汗が流れ落ち、首元に巻いたタオルを濡らしていた。山道の次のトイレポイントまであと2キロ以上あるという案内表示を見て、私の顔からは完全に血の気が引いた。周囲には多くのハイカーが行き交っており、茂みに入って用を足すなどという恥ずかしい真似は到底できない。この社会的状況が、私を山道という名の檻に縛り付けていた。
私はリュックサックのストラップを両手で引きちぎらんばかりに握りしめ、お尻の括約筋を極限まで締め上げながら、一歩一歩を踏みしめた。パンツの中で太ももをきつく擦り合わせ、腰を少し引いた前屈みの不自然な姿勢で歩く姿は、すれ違う人々から奇異の目で見られていたかもしれない。 「お願い、次の売店までなんとか持って……」 脳内で何度も距離と歩行時間の計算を繰り返し、必死に自分と言い訳を交わした。しかし、便意の第二波は容赦なく私の内臓を掴み、下腹部をギシギシと収縮させた。
便意の第三波が襲ったとき、あまりの激痛に私は立ち止まり、その場に崩れ落ちそうになった。両手で下腹部を抱え込み、登山靴の底を土の地面に擦りつけながら、がくがくと震える膝を内側に折り曲げて耐えた。顔面は完全に蒼白になり、きつく噛み締めた唇からは血の気が失せていた。恥ずかしさと、この自然の中で今にも決壊してしまいそうだという恐怖が頭を支配し、心臓は早鐘のように脈打っていた。
ようやく売店のトイレの看板が見えた瞬間、私は最後の一歩を踏み出したが、その脚は震えており、手すりにすがりつきながら個室へ滑り込んだ。便座に腰を下ろし、すべてを排出した瞬間の、全身の力が抜けるような熱い解放感。今でも山道を歩くたび、あの時の冷や汗の冷たさと、下腹部に走った激しい痛みを思い出して股の奥が引き締まる。
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