株主総会の長い沈黙
肌寒い11月の午前10時、私は本社の大講堂で開催された年次株主総会に出席していた。壇上では社長が厳かに今年度の決算報告を読み上げており、会場内は異様な緊張感に包まれていた。最初の異変は、総会が始まってから40分が経過した頃だった。下腹部の奥深くが激しく収縮し、冷たい汗が背中を一気に駆け下りた。 今朝、緊張をほぐすために飲んだ冷たい緑茶が、この最悪のタイミングで私の胃腸を刺激し始めたのだ。
私はその日、上品なグレーのビジネススーツに、白いシャツ、そして黒のパンプスを履いていた。髪は後ろで丁寧なお団子にまとめていたが、腹痛による冷や汗で額の生え際が濡れ、前髪が額にはりついてしまった。メイクは株主たちや役員たちの鋭い視線を浴びる緊張感と、腸内の激痛のせいで崩れ去り、丁寧に施したファンデーションが脂汗で浮き上がっていた。膝の上の資料を握る右手は、手汗で滑りそうになり、指先がカタカタと震えていた。
スラックスの中でお尻の括約筋を極限まで締め上げ、両脚をクロスさせてピンと伸ばした姿勢を維持しようとしたが、パンプスを履いた足元は小刻みにがくがくと震えていた。 「あと、あと20分……質問タイムが終わるまで……」 頭の中で残りの時間を逆算し、必死に自分と言い訳を交わした。しかし、便意の第二波は容赦なく私の内臓を掴み、ゴロゴロと不穏な音を立てて波打った。総会の最前列に座っているため、ここで退席すれば非常に目立つ。その社会的責任感が、私を椅子に縫い止めていた。
便意の第三波が襲ったとき、あまりの激痛に私の背筋はピンと跳ね上がり、声を出さないように歯を食いしばった。顔面は完全に土気色になり、きつく噛み締めた唇からは赤みが消えて白くなっていた。恥ずかしさと、株主総会の真っ只中で今にも決壊してしまいそうだという恐怖が頭を真っ白に染め上げ、心臓は早鐘のように脈打っていた。耳の奥が熱くなり、自分の荒い呼吸音だけが大きく聞こえる。
総会が終了した瞬間、私は席から立ち上がろうとしたが、下腹部の急激な痛みに襲われ、腰が引けた内股のまま一瞬固まってしまった。両手でお腹を押さえ、周囲の目を盗むようにしてロビーの多目的トイレへと滑り込んだ。便座に座り、すべてを排出した瞬間の、魂が抜けるような熱い解放感。今でも株主総会の鐘の音を聞くたび、あの時の冷たい汗と、股の奥がすくむような恐怖を思い出す。
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