高度1万メートルの密室気流
冷たい秋雨が降る10月の夕方5時過ぎ、羽田行きの国内線旅客機の機内でのことだ。悪天候のため機体は激しく揺れ続け、客室には「シートベルト着用サイン」が点灯したまま1時間近くが経過していた。私は通路側の席に座り、激しい揺れに耐えながら、ふと斜め前方の窓側席の女性に目をやった。……その時、普段は冷静に見える上品な女性が、不自然な様子で身を捩っているのが目に入った。
彼女は20代後半ほどの女性で、ベージュの上質なトレンチコートに、ライトブルーのスキニージーンズ、そして黒のレザーアンクルブーツを履いていた。髪はサイドで上品な三つ編みにまとめられ、耳元にはゴールドのフープイヤリングが飾られていた。しかし、彼女の額からは大粒の脂汗が流れ、ファンデーションが脂汗でじわじわとヨレていた。メイクはヨレて目の周りが黒くにじみ、噛み締めた唇からは赤みが完全に消えていた。両手でシートの肘掛けを千切らんばかりに握りしめ、指先が白く強張っていた。
ジーンズに包まれた彼女の脚は、内ももをこれでもかと密着させ、両膝を限界まで押し付け合うようにして激しく震えていた。ブーツを履いた足首を交互に浮かせては、つま先立ちになり、小刻みに足を動かして猛烈な尿意に耐えていた。 気流の乱れでシートベルトサインが消えず、席を立つことが一切許されないという過酷な状況だった。もし勝手に立てば、客室乗務員に制止され、周囲の乗客の注目を浴びることになる。その社会的檻が彼女を座席に縛り付けていた。
尿意の波が押し寄せるたび、彼女は「はぁ……っ」と熱い吐息を漏らし、腰を浮かせてお尻を強く締め上げていた。見てはいけないと思つつも、彼女のジーンズの股間部分が限界の緊張で強張る様子や、太ももの震えから目が離せなかった。私の心臓は早鐘のように打ち鳴らされ、息をするのも忘れるほどだた。彼女の顔は尿意の激痛で歪み、涙で濡れた瞳で天井のサインを睨みつけていた。
ついにサインが消えた瞬間、彼女は弾かれたように立ち上がったが、その脚はがくがくと震えており、手すりにすがりつきながら不自然な内股で後方のギャレーへと消えていった。今でも飛行機のシートベルトサインを見るたび、あの時の彼女の震える背中と、漂っていた切迫した空気感を思い出して耳の奥が熱くなる。
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