ラウンジバーの果てしない列
肌寒い11月の金曜日、夜10時過ぎの都内一流ホテルの最上階にあるスカイラウンジバーでのことだ。大人のジャズが流れ、薄暗い照明がテーブル席を照らす落ち着いた空間は、ビジネスパーソンやカップルの歓談で賑わっていた。私はカウンターでカクテルを傾けながら、ふとトイレへと続く通路の前にできた長い列に目を向けた。……その時、列の中ほどに並んでいた上品な女性が視界に入った。
彼女は深い赤のベルベット調コクーンワンピースに、薄手の黒ストッキング、精度を高める黒の9センチピンヒールを履いた。髪はすっきりとしたボブカットに整えられ、耳元には大粒のゴールドイヤリングが飾られていた。しかし、彼女の額からは大粒の脂汗が流れ、ファンデーションが脂汗でじわじわとヨレていた。メイクはヨレて目の周りが黒くにじみ、噛み締めた唇からは赤みが完全に消えていた。両手でハンドバッグを強くお腹に押し当て、上体を前かがみに折り曲げていた。
ワンピースに包まれた彼女の脚は、内ももをこれでもかと密着させ、両膝を限界まで内側に折り曲げていた。ヒールのつま先に極端な荷重がかかっているらしく、足元が小刻みにがくがくと震え、床にヒールがカチカチと微小な音を立てていた。冷たいフローズンカクテルを何杯も口にした後に、トイレの個室がなかなか空かないため、彼女は逃げ場のない尿意に捕らえられていたのだ。 「まだ開かないの……?」と、彼女は個室のドアを見つめながら焦燥の声を漏らしていた。周囲の目を気にする社会的プライドが、彼女をその場に縛り付けていた。
尿意の波が押し寄せるたび、彼女は「っ、ふう……」と熱い吐息を漏らし、腰をわずかに落としてお腹を抱え込むようにして必死に耐えていた。見てはいけないと思つつも、彼女のタイトスカートの裾から伸びる太ももが限界の緊張でがくがくと震え、ワンピースが不自然に波打つ様子から目が離せなかった。私の心臓はバクバクと激しく脈打ち、喉がカラカラに渇いた。彼女の美しい顔は尿意の激痛で歪み、涙が目尻からにじんでいた。
個室のドアが開いた瞬間、彼女は「あ、っ……」と声を漏らし、腰が引けた内股のまま這うようにして個室へと滑り込んでいった。今でも高級バーの静かな雰囲気を感じるたび、あの時の彼女の限界の背中と、漂っていた切迫した空気感を思い出して耳の奥が熱くなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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