オフィスフロアの孤軍奮闘
冷たい秋雨が降る10月の夜8時過ぎ、都内のオフィスビルにある静まり返った執務フロアでのことだ。明日の役員会議に向けた資料作成のため、少数の社員がそれぞれのデスクで黙々と作業を続けていた。キーボードを叩く音だけが響く中、私はコピー用紙を取りに立ち上がり、ふと隣のデスクで作業をしている先輩の佐藤さんに目をやった。……その時、いつも冷静な彼女が、不自然な様子でお腹を抱え込んでいるのが目に入った。
彼女は上品な白のブラウスに、ネイビーのウールペンシルスカート、そして黒の7センチヒールパンプスを履いていた。髪はすっきりと一本のポニーテールにまとめていたが、腹痛による冷や汗で額の生え際が濡れ、前髪が額にはりついてしまった。メイクは長時間の残業と腸内の激痛のせいで崩れ去り、丁寧に施したファンデーションが脂汗で浮き上がっていた。手元のキーボードを叩く右手は、手汗で滑りそうになり、指先がカタカタと震えていた。
タイトスカートの下の彼女の脚は、ストッキングを履いた内ももを激しく擦り合わせ、両膝を密着させて内側に折り曲げていた。パンプスを履いた足首を交互に浮かせては、つま先立ちになり、デスクの角に下腹部を押し当てるようにして身を捩っていた。残業の合間に冷たい缶コーヒーを何本も飲んだことが災いし、彼女は逃げ場のない猛烈な便意に捕らえられていたのだ。 「あと、あと少し……このページを保存するまで……」 仕事の責任感と、今さら席を立ってトイレに行く恥ずかしさという社会的な檻が、彼女を行動不能にしていた。
便意の波が押し寄せるたび、彼女は「はぁ……っ」と熱い吐息を漏らし、お尻を強く引き締めていた。見てはいけないと思つつも、彼女のタイトスカートの腰回りが限界の緊張で強張る様子や、太も目の震えから目が離せなかった。私の心臓は早鐘のように打ち鳴らされ、息をするのも忘れるほどだた。彼女の顔は便意の激痛で歪み、涙で濡れた瞳で画面を睨みつけていた。
ついにファイルが保存された瞬間、彼女はマウスを置くと同時に、両手でお腹を押さえ、内股のまま這うようにしてフロアの奥の化粧室へと駆け込んでいった。今でも夜のオフィスの静けさを感じるたび、あの時の彼女の震える背中と、漂っていた切迫した空気感を思い出して胸が締め付けられる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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