スピーチコンテストの喝采の裏で
肌寒い11月の午後2時過ぎ、高校の講堂で行われていた全校英語スピーチコンテストでのことだ。ステージの上は眩しい照明に照らされ、客席には何百人もの生徒や審査員の先生方が座っている。最初の異変は、私の前の順番の生徒がスピーチをしている最中、下腹部にツンと走った明確な尿意だった。出番前の緊張をほぐすために控室で温かいウーロン茶を二杯も飲んだことが、この緊張感の中で仇となったのだ。
私はその日、学校指定の紺色ブレザーに、赤のチェック柄プリーツスカート、黒のハイソックスとローファーを履いていた。髪は耳の上でツインテールにまとめ、緑色のリボンできっちりと結んでいたが、尿意の焦りによる冷や汗で額の生え際が濡れ、前髪が額にはりついてしまった。メイクはしていなかったが、あまりの激痛に顔面は完全に土気色になり、唇は噛み締めすぎて端から白くなっていた。原稿を握る右手は、手汗で滑りそうになり、指先がカタカタと震えていた。
「私の名前が呼ばれる……」 逃げ出すこともできず、私は自分の順番が来た瞬間、演台へと進んだ。演台の陰で両脚をこれでもかと密着させ、両膝を限界まで押し付け合うようにして激しく震えていた。ローファーの中でつま先を丸めているらしく、足先が不自然に丸まり、がくがくと震える足元を支えながらマイクに向かった。 「Hello, everyone……」 スピーチを開始したものの、尿意の第二波は容赦なく私の膀胱を収縮させ、下腹部に鋭い激痛が走った。ここでスピーチを中断してトイレに逃げ込めば、これまでの努力が全て水の泡になる。その社会的プレッシャーが私を演台に縫い止めていた。
尿意の第三波が襲ったとき、あまりの激痛に私の背筋はピンと跳ね上がり、声が一瞬震えた。 私は演台の縁を両手で強く握りしめ、下腹部を演台に押し当てるようにして痛みを逃がそうとした。恥ずかしさと、大衆の前で今にも決壊してしまいそうだという恐怖が頭を真っ白に染め上げ、心臓は早鐘のように脈打っていた。耳の奥が熱くなり、自分の荒い呼吸音だけが大きく聞こえる。
スピーチが終了し、大きな拍手の中でお辞儀をした瞬間、私は腰が引けた内股のままその場で凍りついた。両手でスカートの上から股間を強く圧迫し、がくがくと震える足元を支えながら、這うようにしてステージ裏の女子トイレへと消えていった。すべてを解放した時の天国のような心地よさ。今でも英語のスピーチを聞くたび、あの時の冷たい汗と、股の奥がキュンとすくむ焦燥感を思い出して胸が熱くなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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