深夜高速バスと豪雪の立往生
凍てつくような1月の深夜1時過ぎ、信越地方の山道を進む深夜高速バスの車内でのことだ。外は猛吹雪で、バスは完全に立ち往生していた。私は通路側の席に座り、低く響くエンジン音を聞きながら浅い眠りを繰り返していた。最初の異変は、立往生が始まって1時間が経過した頃から始まった猛烈な尿意だった。
私はその日、薄いグレーのチェスターコートを膝にかけ、首元にはネイビーのシルクマフラーを巻いていた。髪は綺麗にサイドに編み込まれていたが、尋常ではない焦燥のせいか、おでこには汗がにじみ、前髪が乱れて貼りついていた。足元は茶色のレザーロングブーツを履いていたが、そのブーツの先が小刻みに、そして激しくトントンと床を叩いていた。コートの上から下腹部を両手で強く押し込み、上体を前かがみに折り曲げていた。
タイトなデニムパンツに包まれた私の細い両脚は、限界まで内側に絞り込まれ、膝と膝を押し付け合うようにして激しく震えていた。完璧に施されたはずのメイクは、車内の暖房と冷や汗のせいで崩れ、アイラインが目尻でわずかに滲んで黒い筋を作っていた。バスのトイレは故障中で使用できない。運転手に「どうしても限界です」と言えば、乗客全員の注目を浴びることになる。その過酷な社会的な檻が、私の逃げ場を完全に奪っていた。
何度もスマートフォンで現在地と道路情報を確認し、その度に時間の進みの遅さに絶望していた。恥ずかしさと尿意の極限状態で心臓は激しく高なり、手のひらにじっとりと汗をかいた。尿意の波が激しく襲いかかるたび、私はシートの上で腰を浮かせ、ブーツの踵を床に激しく叩きつけて震えを逃がそうとしていた。
ついに救助のパトカーが到着した。その瞬間、私は「うっ……」と声を漏らし、顔を両手で覆ってうずくまってしまった。指の隙間から覗く顔は真っ赤に変色し、涙で濡れていた。バスがようやく動き出し、近くのPAに滑り込むと、ドアが開く前に通路へ滑り出したが、その脚は完全に笑っており、手すりにすがりつきながらでなければ立っていられない様子だった。今でも雪の高速道路を見るたび、あの時の常夜灯の下での震えと、切迫した気配を思い出して耳が熱くなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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