静まり返ったセミなー会場の異変
八月の蒸し暑い午後二時、大手企業の合同研修が行われている大セミナー室でのことだ。冷房は一応動いてはいたが、150人以上の熱気で室内は生温く、重苦しい空気が漂っていた。私は他部署からの参加者として中段の席に座り、プロジェクターの光に照らされる演台に目を向けていた。……その時、私の二つ隣の席に座っていた女性の様子に微かな異変が生じた。
年齢は二十代半ばの、上品なオフィスカジュアル風の女性。黒いタイトスカートに、薄手の白いコットンブラウスを合わせ、足元は黒の5センチヒールパンプスを履いていた。髪は綺麗にハーフアップにまとめられ、知的な黒縁のスクエアメガネをかけていた。しかし、彼女の凛とした姿に微かな狂いが生じた。
研修の講義中、彼女の喉元がゴクリと大きく動き、手に持っていたボールペンを動かす手が激しく震えだした。額からはダラダラと冷や汗がにじみ出し、綺麗に整えられていたファンデーションが脂汗でじわじわとヨレ、頬のチークが浮き上がっているのが遠目にも分かった。下腹部を襲ったのは、急激な温度変化と緊張による猛烈な便意の第一波だった。
彼女はタイトスカートの裾の下で、ストッキングを履いた内ももをこれでもかと擦り合わせ、両脚を不自然なほど密着させて座っていた。ヒールの高いパンプスの爪先を床に強く押し付け、カカトを交互にせわしなく上下させながら、お尻の括約筋を極限まで締め付けている。その限界状態のせいか、呼吸が荒くなって肩が上下に激しく揺れ始め、お腹の中で暴れ回る泥水のような塊を、紙一枚の厚さの括約筋だけで必死にせき止めているのだろう。
「あと10分、このセクションが終わるまで……」と、彼女の唇は噛み締められ、血の気が完全に引いて白くなっていた。講義中であり、途中で席を立つことは許されないという強烈な社会的圧力が、彼女をその場に縛り付ける檻となっていた。
便意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、彼女は思わず「くっ……」と声を漏らしそうになり、上体を深く折り曲げて机の端を白くなるほど強く握りしめた。メガネのレンズの裏で、彼女の目は涙で潤み、必死に焦燥のなかで時間計算を繰り返しているのが伝わってきた。
見てはいけないと思つつも、彼女の太ももが限界の緊張でがくがくと震え、スカートの生地が激しく動く様子から目が離せなかった。私の心拍数は跳ね上がり、喉が乾いて息をするのも忘れるほどだった。
講義が終わり、休憩のアナウンサーが流れた瞬間、彼女は丁寧な挨拶もそこそこに、お尻をかばうように極端な内股の姿勢で自習室から滑り降りた。競歩のような不自然な早足で、廊下の奥の化粧室へと消えていった。今でもプロジェクターのファン音を聞くたび、あの時の彼女の限界の表情と、漂っていた切迫した空気感を思い出して耳の奥が熱くなる。
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