排泄物語

人身事故で47分間、駅間に閉じ込められた朝のこと

投稿者: 満員電車の亡霊1分で読めます閲覧 9314.5(4件)

都内で事務職をしています。昨年6月13日、火曜日の朝の話です。8時2分発の急行に乗りました。梅雨入り前の蒸し暑い朝で、車内はすでに湿気がこもっていました。

乗車率は体感でいつも通り、180%くらいでした。8時16分、電車が駅間で急停車しました。

人身事故のアナウンス。私はその朝、家でコーヒーを2杯飲んでいました。これがが失敗でした。停車から20分で、下腹にはっきりした尿意が来ました。最初は我慢できる程度でしたが、じわじわと存在感を増していきました。

30分で、足踏みをしたくなりました。満員電車では足踏みもできません。つり革を握る手に力を入れて、頭の中で素数を数えました。膀胱の奥がじんと重く、時々きゅっと締めつけるような感覚が走りました。周りに人がいるという事実だけが、かろうじて私を保たせていました。

41分経過した時点で、正直、あと5分で決壊すると思いました。膝を少し曲げて、内ももに力を入れ続けました。周りの人は全員スマホを見ています。誰も私の内側の戦いには気づいていません。

この車両で私だけが戦っている、という孤独がありました。8時49分、電車が動きました。心臓が跳ねました。9時1分、次の駅で降りて、トイレの列に6人並んで、9時8分に個室に入れました。

間に合いました。個室の中で、少しだけ放心しました。全身の力が抜けて、しばらく壁に手をついていました。膝が笑っていたのを覚えています。

あの47分を、私は多分一生忘れません。以来、朝のコーヒーは1杯までと決めています。

あの日、駅のトイレの個室で、少しの間座ったまま呆然としていました。周りの喧騒がすべて遠くに聞こえて、自分だけが取り残されたような、不思議な静けさの中にいました。会社に着いたのは9時40分で、始業に間に合いませんでしたが、上司には体調不良とだけ伝えました。あの朝の記憶は、今でも駅間停止のアナウンスを聞くたびに鮮明に蘇ります。

― この話は、これにて ―

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掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。

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