排泄物語

朝8時14分、駅の女子トイレの行列の先頭で起きたこと

投稿者: 満員電車の亡霊2分で読めます閲覧 8694.4(8件)

通勤で使う駅の女子トイレは、個室が4つしかありません。朝8時台は常に5、6人の列ができます。ある月曜日の8時14分、私は列の3番目に並んでいました。その朝の駅は、いつもより混雑していました。

先頭にいたのは、私と同年代くらいのスーツの女性でした。並んだ時から明らかに切羽詰まっていました。バッグを両手できつく抱えて、視線を一点に固定しているような様子でした。前髪が額に貼り付いている。それは冷や汗の痕跡。

30秒ごとに時計を見て、屈伸のような動きをして、時々目を閉じて動かなくなります。その周期がだんだん短くなっていく。個室は4つとも長期戦の気配でした。1分、2分、3分。時間の経過とともに、女性の顔色がだんだん青ざめていくのが分かりました。内ももが、かすかに震え始めている。

誰も出ません。女性の呼吸が浅くなっていくのが、後ろからでも分かりました。列の誰もが、その危機を認識していた。先頭の女性が小さく「うそでしょ」と言ったのが聞こえました。その一言に、彼女の限界がどこにあるかが凝縮されていた。列全体に、なんとも言えない緊張感が漂いました。

3分半後、ようやく一番奥が空きました。女性は飛び込みました。そして、ドアが閉まった直後、間に合わなかったのだと思います。中から小さな「あっ」という声と、その後の長い沈黙。それは人間の尊厳が、音もなく崩れていく瞬間だった。並んでいた全員が、聞こえなかったふりをしました。誰も目を合わせず、スマホを見るふりをしていました。

女性は15分出てきませんでした。私は隣が空いたので先に用を済ませましたが、列の誰もも何も言わずに順番を待っていた、あの空気をよく覚えています。出てきた女性は、髪を直しながら平静を装っていましたが、目元は少し赤くなっていました。女性同士の沈黙の優しさというものは、確かにあると思います。列に並んでいた他の女性たちも、彼女が個室から出てきた時、誰も特別な視線を送りませんでした。

まるで最初から何もなかったかのように、それぞれが自分の番を待ち、用を済ませ、去っていきました。あの朝の駅のトイレで交わされた、言葉にならない連帯感のようなものを、私は今でもよく覚えています。それは女性だけが知る、もう一つの絆だったのだと思う。

― この話は、これにて ―

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掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。

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