排泄物語

歯科医院の治療椅子と動けない身体

投稿者: 生成エピソード集(エピソード551〜600)2分で読めます閲覧 7544.8(4件)

冷え込みの厳しい十一月の午後四時すぎ、駅前にある近代的な歯科医院でのことだ。私は虫歯の根管治療を受けるため、半個室の治療室で診察台のシートを水平に倒されて横たわっていた。院内は静かなクラシック音楽とキーンという不快なドリル音が響き、治療への過度な緊張が私の身体を硬直させていた。治療が始まる前、緊張を和らげるために待合室のウォーターサーバーで冷たい水を二杯も飲んだのが、完全に災いした。

治療 the 最中、下腹部の奥深くでツンとした鋭い尿意の第一波が走り抜けた。歯科医が私の口にラバーダムを取り付け、金属製の開口器で口を大きく開けた状態に固定した直後のことだった。「まだ大丈夫、治療はあと十五分で終わるはず」と自分に言い聞かせたが、それが恐怖の始まりだった。

私はその日、上品な薄ピンクのウールカーディガンに、白いレースのキャミソール、そして花柄のシフォンプリーツスカートと、薄手のナイロンストッキングを穿いていた。髪は緩やかなウェーブをかけてパールのヘアピンで留めていたが、尿意の焦燥感から全身に噴き出した冷や汗で首元がじっとりと濡れ、キャミソールの肩紐が肌に張り付く。顔面は完全に血の気が引いて白くなり、綺麗に整えていたはずのファンデーションが脂汗でヨレ、マスカラが滲んで涙目のようになっているのが自覚できた。

口を完全に器具で固定され、言葉を発することができないという極限の状況と、治療を中断させれば医師や衛生士に迷惑がかかるという強烈な社会的圧力が、私を診察台という名の檻に縛り付けていた。

尿意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、膀胱は決壊寸前の水風船のように膨らみ、下腹部がギシギシと痛む。私はスカートの下で、ストッキングを履いた内ももをこれでもかと密着させ、両膝を交互にすり合わせいるようにして激しく震えさせた。診察台の上で両足を不自然に交差させ、お尻の筋肉を極限まで締め付けて尿道の栓を守っていた。足の指先を限界まで丸め、全身の筋肉を硬直させて尿意を逃がそうとするが、お腹の奥の熱い圧力は高まる一方だった。

「あと五分、この詰め物が入るまで……」と、頭の中で狂ったように秒刻みの計算を繰り返すが、医師が「少し痛みますよ」と声をかけるたびに心臓が激しく脈打ち、焦りで頭が真っ白になった。恥ずかしさと、この無防備な治療台の上で今にも漏らしてしまいそうだという恐怖が混ざり合い、耳の奥が熱くなって喉がカラカラに渇いた。

見てはいけないと思つつも、自分の限界の太も目の震えと、プリーツスカートが小刻みに揺れるスリルの中で、心臓はバクバクと早鐘のように脈打っていた。

ようやく治療が終了し、開口器が外された瞬間、私は「トイレ……行かせてください」と掠れた声を絞り出した。シートが起こされるや否や、お尻をかばう極端な内股の姿勢で診察室を飛び出し、受付の横にあるトイレへと滑り込んだ。便座に腰を下ろし、温かい液体が一気に放出された瞬間の、頭の芯がとろけるような凄まじい解放感。今でも歯医者のキーンというドリルの音を聞くたび、あの時の冷や汗の冷たさと、股の奥がすくむような恐怖を思い出す。

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掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。

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