静寂に包まれた冬の美術館
冷たい風が吹き抜ける十二月の水曜日、午後一時すぎの都心の美術館でのことだ。平日の昼間ということもあ���、展示室内は非常に静かで、観客たちは厳かな沈黙の中で絵画を鑑賞していた。私は話題の特別展を見るために、冷え切った大理石の床を踏みしめながら展示室を巡っていた。展示室に入る直前、寒さを凌ぐためにロビーの自動販売機で温かいお茶を買って一気に飲み干したのが、完全に裏目に出てしまった。
最初の異変は、印象派の絵画の前で立ち止まって解説を読んでいる最中に訪れた。下腹部の奥深くで、ツンとした鋭い尿意の針がピリッと走り抜けたのだ。「まだ展示室を半分しか見ていないし、トイレは入り口のロビーにしかない」と自分を奮い立たせようとしたが、尿意は一気に強暴な第二波となって襲いかかった。
私はその日、エメラルドグリーンの上品なニットワンピースに、黒のウールカーディガン、そして黒のタイツと五センチのヒールブーツを履いていた。髪はハーフアップに綺麗にまとめていたが、尿意の焦燥感から全身に噴き出した冷や汗で首元がじっとりと濡れ、ワンピースの襟元が皮膚にはりつく。綺麗に整えていたはずのファンデーションが脂汗で浮き上がり、マスカラが滲んで涙目のようになっているのが自覚できた。
美術館の展示室内は、咳払い一つためらうほどの静寂に満ちており、一度ヒールをカツカツと鳴らすだけで周囲の視線が一斉に集中するという強烈な社会的圧力が、私をその場に縫い止める檻となっていた。
尿意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、膀胱は決壊寸前の水風船のように膨らみ、下腹部がギシギシと痛む。私はワンピースの下で、両腿をこれでもかと密着させ、両膝を内側に極端に曲げて、もじつきながら全身を小刻みに震わせていた。ブーツのつま先を冷たい大理石の床に強く押し付け、何とか決壊を防ごうと必死で耐えた。顔の筋肉は苦痛で歪み、奥歯を噛み締めすぎて顎の骨が痛むほどだった。額から流れる汗がアイブロウを溶かし、目に入ってしみるが、それを拭う余裕すらなかった。
「あと十分、このセクションを見終わるまで……」と、頭の中で狂ったように秒刻みの計算を繰り返すが、お腹の奥が痛むたびに心臓が激しく脈打ち、焦りで頭が真っ白になった。恥ずかしさと、この静寂の中で今にも漏らしてしまいそうだという恐怖が混ざり合い、耳の奥が熱くなって喉がカラカラに渇いた。
見てはいけないと思つつも、自分の限界の太も目の震えと、ワンピースの裾が不自然に揺れるスリルの中で、心臓は早鐘のように脈打っていた。
ついに我慢の限界を迎え、私は展示室を途中退席し、お尻をかばう極端な内股の姿勢でロビーへ急いだ。一歩歩くごとに尿道が決壊しそうになり、涙目で顔を歪めながら化粧室に滑り込んだ。便座に腰を下ろし、一気に尿が放出された瞬間の凄まじい解放感。今でも静かな展示室に入るたび、あの時の冷や汗と股の奥がすくむような恐怖を思い出す。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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