豪華な劇場ロビーでの葛藤
冷たい雨が降る十一月の土曜日、午後二時すぎの都心の歴史ある劇場でのことだ。私は話題のオペラを鑑賞するため、豪華な装飾が施されたロビーのソファーに座っていた。開演前に友人と食べたフレンチのランチと冷たいシャンパンが、この最悪のタイミングで私の胃腸を急激に刺激し始めた。
最初の異変は、開演のベルが鳴り響いた瞬間に訪れた。下腹部の奥深くで、ズシンと重い地鳴りのような便意の第一波が静かに頭をもたげた。「まだ第一幕が終わるまであと一時間はある、途中退席はできない」と自分に必死の言い訳をしていたが、第一波に続き、より強力な第二波の激しい腹痛が襲ってきた。
私はその日、上品なマスタード色のイブニングドレスに、パールのネックレス、そして五センチのシルバーヒールを履いていた。髪は綺麗にアップスタイルにまとめていたが、腹痛の焦燥感から全身に噴き出した冷や汗で首元がじっとりと濡れ、ドレスの襟元が皮膚にはりつく。綺麗に整えていたはずのファンデーションが脂汗で浮き上がり、マスカラが滲んで涙目のようになっているのが自覚できた。
劇場内は非常に静かで、観客たちは息をのむような静寂に包まれていた。開演直後のロビーから劇場内に入らなければならないという社会的圧力が、私をその場に縫い止める檻となっていた。
便意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、括約筋はすでに悲鳴を上げていた。ドレスの中で両腿をこれでもかと密着させ、両膝を内側に折り曲げて全身を激しく震わせた。ヒールのつま先に全体重をかけ、カカトを交互にせわしなく上下させながら、お尻の括約筋を極限まで締め付けた。お腹の中で泥水が渦巻くような激しい蠕動運動が起こるたび、私は思わず「くっ……」と声を漏らしそうになり、上体を深く折り曲げて巾着袋を指先が白くなるほど強く握りしめた。
「あと五分、この波が治まるまで……」と、頭の中で狂ったように秒刻みの計算を繰り返すが、お腹の奥が痛むたびに心臓が激しく脈打ち、焦りで頭が真っ白になった。恥ずかしさと、この大衆の面前で今にも漏らしてしまいそうだという恐怖が混ざり合い、耳の奥が熱くなって喉がカラカラに渇いた。
見てはいけないと思つつも、自分の限界の太も目の震えと、ドレスの裾が不自然に揺れるスリルの中で、心臓は早鐘のように脈打っていた。
ついに私は劇場の入場を諦め、お尻をかばう極端な内股の姿勢でロビーの奥にある化粧室へと急いだ。一歩歩くごとに、お腹の奥で熱い塊が出口を求めて激しく自己主張し、涙目で顔を歪めながら個室へ滑り込んだ。便座に腰を下ろし、すべてが一気に放出された瞬間の凄まじい解放感。今でもオペラの調べを聞くたび、あの時の冷や汗の冷たさと、股の奥が疼く恐怖を思い出す。だた、あの時のスリルは忘れられない。
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