店のトイレに40分こもった姉ちゃんと、その後の戦場の話
夜勤あるあるなんだが、うちの店、駅前だから終電後にトイレ駆け込み客が多いんだわ。この前、23時半ごろに20代後半くらいの姉ちゃんが無言でトイレ直行してって、そっから40分出てこなかったわ。飲み会帰りっぽいスーツで、入ってく時の顔面が蒼白だった。歩き方がもう内股で、ドア開ける手も震えてた気がするわ。バッグを腹に押し当てるみたいに抱えてたのも印象的だったな。
倒れてないか心配になって声かけようか迷ってたら、やっと出てきて、無言でスポーツドリンクとウェットティッシュ買って帰ってったわ。最後まで目が合わなかった。顔だけは憑き物落ちたみたいにさっぱりしてたけどな。足取りも心なしか軽くなってた気がしたわ。その姉ちゃんの表情の落差が、その中での激しい闘争を物語ってた。
で、次にトイレ入った客が3秒で「うわ」って言いながら出てきてさ。見に行ったら、まあ、戦場だったわ。詰まってはないんだが、色々と間に合ってなかった痕跡があって、換気扇が全く仕事してなかった。清掃30分コースだったわ。その30分間、自分の仕事の現実を突きつけられた。
時給1100円でやることじゃないんだよな。でもまあ、あの姉ちゃんも路上でああなるよりはマシだったろうし、うちの店が誰かの尊厳を守ったならそれでいいわ。知らんけど。店長には報告してない。防犯カメラも誰も見てないから大丈夫だろ。ああいう戦場の後片付けも含めて夜勤の仕事だと思うことにしてるわ。
あの蒼白だった顔と、帰り際の軽い足取りのギャップが、なんか妙に忘れられないんだよな。人間が心身ともに満杯状態から解放される瞬間。それを目にすること自体が、夜勤の現実なんだろう。あの姉ちゃん以外にも似たような客、何人も見てきたけど、みんな一様に入る時と出る時で顔つきが全然違う。地獄と天国が同じ個室の中にあるみたいなもんだと思うわ。
まあでも、そういう瞬間に立ち会えるのも、夜勤の役得みたいなもんかもしれん。知らんけど。
― この話は、これにて ―
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