ゴミ出しに行ったら店裏の搬入口に先客がいた夜
これは去年の忘年会シーズンだったわ。深夜2時ごろ、ゴミ出しに店の裏回ったのよ。空気が乾燥してて、月がやけに明るい夜だったのを覚えてる。冬の空気が肺に痛い。
そしたら搬入口の陰に人がしゃがんでて、マジでビビったわ。強盗の待ち伏せかと思った。よく見たら20代くらいのお姉さんで、コート着たまましゃがんでて、下から水音がしてた。完全に用足し中だったわ。その瞬間、時間が止まるかと思った。
向こうも俺に気づいて「すいませんすいません」って言いながらも止まらないっていう、地獄の10秒間があって。声は震えてるし、肩もこわばってるし、こっちもどうしていいか分からんくて「ごゆっくり」って言ってゴミだけ置いてすぐ戻ったわ。ごゆっくりって何だよ俺。接客用語が変なとこで出たんだよな。心臓バクバクしながら店に戻ったの覚えてるわ。
あの10秒間は、人生でもトップクラスの気まずさだったわ。相手も俺も、その時間を共有しながら、それでも何もできない状況。同じ空間にいるのに、別の世界にいるような感覚。そのあと店に来るかなと思ってレジで待ってたけど、来なかったわ。気まずかったんだろうな。気まずいわな。
朝方見に行ったら痕跡はほぼ消えてたから、小の方で良かったわ。この時期、駅前でもトイレ夜間閉鎖のとこ多いから、ああいう難民が出るんだよな。もう何年も深夜勤務をやってるけど、この手の出来事は年に何件かある。うちのコンビ二はトイレ開放してるから、恥ずかしがらずに店内に来てほしいわ。あの震える声、なんか妙に耳に残ってるんだよな。
正直、あの10秒間は俺の人生でもトップクラスの気まずさだったわ。強盗じゃなくてよかった安堵と、見ちゃいけないもん見た罪悪感が同時に来て、頭の中がぐちゃぐちゃになった。あの人がどこの誰かも知らんし、二度と会うこともないと思うけど、なんか一つの街の裏側を見た気分だったわ。知らんけど。
― この話は、これにて ―
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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