家族旅行のミニバン後部座席
高校2年の夏休み、8月半ばの猛烈に蒸し暑い日のことだ。私たち家族は毎年恒例となっている伊豆への温泉旅行のため、朝早くから満載の荷物を載せたミニバンに乗り込んでいた。父が運天するミニバンの車内は冷房が効いていたが、出発直前に冷たい麦茶を大きなコップに二杯も一気に飲み干したことが、すべての悲劇の始まりだった。西湘バイパスに乗る頃には、私の下腹部に最初の静かな異変が訪れていた。少しお腹が冷えたような、かすかな違和感。「まあ、次のサービスエリアで入ればいいか」と軽く考えていたが、行楽期の凄まじい大渋滞に捕まり、高速道路は赤く連なるテールランプの海へと変貌した。車は完全に動きを止め、強い日差しが窓ガラスを通して容赦なく車内を熱し始めていた。
私はお気に入りの白いコットンのノースリーブニットに、太ももが半分ほど露出するタイトなデニムショートパンツを穿いていた。髪は高い位置できつめのポニーテールに結び、大きな青いシュシュで留めている。耳元には小ぶりなシルバーのフープピアスが揺れていた。しかし、車外の気温が35度を超えるなか、渋滞による焦りと膀胱の急速な膨張により、私の全身からはじわりと冷や汗が噴き出し始めていた。首筋を伝う汗がニットの襟元を濡らし、メイクのリップグロスや目元のアイラインが、暑さと極限の緊張によって崩れていくのが自分でも分かった。シートベルトが胸元と下腹部を斜めに横切っており、車が少しでも前進してブレーキをかけるたびに、シートベルトがパンパンに張った私の下腹部を容赦なく圧迫する。そのたびに私は息を止め、目をきつく閉じて歯を食いしばった。
「次のパーキングまであと何キロ?」と聞きたいのに、両親や弟の手前、恥ずかしくて口に出すことができない。私はただ後部座席の片隅で、内もも同士を強く押し付け合い、スニーカーの中で両足の指を思い切り丸めて耐えた。シートの座面にじっとりと汗が染み込み、太ももの裏側がビニール製のシートカバーに貼り付く不快感が焦りを倍増させる。第二波、そしてより強力な第三波の尿意が、十数分おきに私の膀胱を容赦なく締め付ける。「もう限界、本当に漏れる」という野生的な恐怖と、車内の狭い空間から一歩も逃げられないという社会的な檻。私はシートの端を指先が真っ白になるほど握りしめ、体を二つ折りにするようにして下腹部を太ももに押し当てた。
その悶絶するような激しい痛みの最中、私の脳裏に奇妙な熱い感覚が去来した。バックミラーに映る自分の顔は、尿意の苦痛で眉が八の字に歪み、唇を真っ赤になるまで噛みしめている。だが、その限界の苦痛と恥ずかしさに耐えている自分の姿に、身体がゾクゾクと震えるような、暗い高揚感を覚えていることに気づいてしまったのだ。それは人生で初めて経験する、我慢のスリルによる倒錯した快感だった。ようやく辿り着いたパーキングエリアのトイレで、信じられないほどの時間をかけて温かい尿を解放した瞬間、頭の芯がとろけるような快感とともに、あの車内での張り詰めた極限の興奮が私の胸に深く刻み込まれた。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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