雨の日の渋滞タクシーでの戦い
春の雨が降りしきる夜7時半過ぎ、都心の混雑する首都高速道路を走るタクシの車内でのことだ。私は重要な取引先との懇談会に向かう途中だったが、雨による事故で高速道路は大渋滞となり、タクシーは完全に身動きが取れなくなっていた。窓ガラスには雨粒が激しく当たり、車内は妙に静まり返っていた。
最初の異変は、料金メーターが上がるのを眺めていた時に訪れた。お腹の奥がギュルギュルと急激に差し込むように痛み、直後に冷たい汗が全身から吹き出した。昼食に食べたジャンクフードと、冷たい炭酸水が胃腸を急激に刺激したのだ。
私はイエローのトレンチコートに、ネイビーの薄手ニット、そしてベージュのプリーツスカートにベージュのストキグを履いていた。髪はハーフアップにしていたが、猛烈な便意の第一波が来た瞬間から体中がガタガタと震え出し、冷や汗が額からにじんで首筋を濡らした。タクシーの手すりを握りしめる両手は強張り、指先は白くなっていた。スカートの下では、両脚をきつく交差させ、ヒールを車のマットに押し当てるようにお尻の筋肉を極限まで締め付けていた。
高速道路の上という、物理的に次の出口まで降りられない絶対的な檻が、私をパニックへと追い詰めた。
便意の波は容赦なく押し寄せ、一度引いたかと思えば、さらに凶悪な第二波、第三波が下腹部を襲う。運転手に「次の出口までどれくらいですか」と聞くが、「事故渋滞だから15分はかかる」という絶望的な答えが返ってきた。お腹の奥で渦巻く決壊寸前の衝動に、内臓が悲鳴を上げていた。もしここで決壊してしまったら、私の社会的な信用もプライドもすべてが泥にまみれる。その恐怖で、心臓が爆発しそうなほど激しく波打っていた。
恥ずかしさと焦燥感で頭がどうにかなりそうになり、耳の奥が熱くなって呼吸が荒くなっていく。
ようやく高速を出て、コンビニを見つけた瞬間、私は運転手に車を止めるよう叫び、滑り込むようにトイレへと走った。便座に座り、限界の圧力をすべて排出した瞬間の、全身の力が抜けていくような解放感は一生の思い出だ。
今でも雨の日のタクシーの渋滞に遭遇するたび、あの時の冷や汗の匂いと、車内で必死に太ももを締め付けて耐えていた極限の感覚を思い出して股の奥がすくむ。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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