初夏の山道と消えた道標
初夏の強い日差しが照りつける6月の日曜日の正午過ぎ、私は標高1000メートルほどの人気のある登山道を一人で歩いていた。緑豊かな木々の間から差し込む光が美しく、周囲には鳥のさえずりが響いている。 ……その時、少し先の登山道の分岐点で、地図を片手に立ち尽くしている女性ハイカーが目に入った。
彼女は20代後半くらいの、登山ブランドのカラフルなウェアに身を包んだアクティブな印象の女性だった。ピンクの吸汗速乾Tシャツに、黒いトレッキングショートパンツ、その下にはグレーのサポートタイツを履いていた。足元は本格的な登山靴で、頭にはベージュのサファリハットを被っている。しかし、そのハットの下の顔は、登ていた疲れとは明らかに異なる焦燥で歪んでいた。 彼女はリュックサックのストラップを両手で引きちぎらんばかりに握りしめ、足元を落ち着かなげにモゾモゾと動かしていた。
彼女の脚は、タイツに包まれた内もも同士を激しく擦り合わせ、両膝を内側に折り曲げていた。 登山靴の底が小刻みに土の地面を削り、カサカサと不穏な音を立てている。 顔のメイクは山登りの汗と、尿意による焦燥で完全にヨレており、頬には流れた汗の筋がはっきりと見えいた。 「どうしよう、次の小屋まであと1時間もある……」と、彼女は道標を睨みつけながら悲痛な声で呟いていた。
彼女は山頂付近で急激に悪化した猛烈な尿意と戦っていたのだ。 山道には遮るものが少なく、他のハイカーも行き交うため、不用意に藪に入ることはできない。その社会的な檻と、自然の中という逃げ場のない空間が、彼女を追い詰めていた。 尿意の波が襲うたび、彼女は腰を落とし、両手で下腹部を抱え込むようにして必死に耐えていた。
見てはいけないと思いつつも、彼女のタイツに包まれた脚が限界の緊張でがくがくと震え、ショートパンツの裾が揺れる様子に、私の心臓はうるさく高鳴った。 喉が渇き、呼吸が浅くなる。 彼女は意を決したように、登山道から外れた薄暗い茂みの奥へと不自然な歩幅で進んでいった。
私はその背中を静かに見つめていた。 茂みの影で、彼女が下半身を露出させて腰を落とし、草むらの中で必死に耐えながら用を足している微かな水音が静かな森に響き渡った。 その時の彼女の限界の表情と、自然の中でさらけ端された野生的な美しさは、今でも山道を歩くたび生々しく思い出され、私の胸を焦がす。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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