エレベーターの密室の罠
乾燥した冬の夕方5時過ぎ、都内の高層オフィスビルのエレベーター内でのことだ。夕方の帰宅ラッシュが始まる直前、エレベーターは一時的な点検作業の不具合により、突然ガタガタと音を立てて階間で緊急停止してしまった。 車内には私と、もう一人、同じフロアの女性役員だけが取り残された。 ……その時、背後に立っていた彼女の異変に私は気づいた。
彼女は40代前半ほどの、仕立ての良いグレーのパンツスーツをスマートに着こなす、非常に知的な雰囲気の女性だった。黒い髪はタイトなボブスタイルで、耳元にはブランドもののダイヤのピアスが輝いていた。しかし、エレベーターが止また直後から、彼女のその凛とした表情は急速に瓦解していった。 彼女は本革のハンドバッグを床に落とし、両手で下腹部を強く抱え込むようにして、壁に背中を押し当てていた。
彼女の脚は、パンプスの中でつま先立ちになり、膝ががくがくと震え、内ももをすり合わせるようにして細かく震えていた。 「っ、ふう……うう……」と、彼女は奥歯を噛み締めながら、押し殺した呻き声を漏らしていた。 エレベーターという完全に密閉された空間。救助が来るまで最低でも30分はかかるというアナウンスがスピーカーから流れた瞬間、彼女の顔からは完全に血の気が引き、額から流れる脂汗でファンデーションがヨレていた。
彼女は、昼食の会議で食べた冷たいサンドイッチのせいで急激に悪化した、猛烈な便意と戦っていた。 逃げ場のない密室で、他人の目があるという極限の社会的な檻。 便意の波が押し寄せるたび、彼女は壁にすがりつくようにして、お尻の括約筋を極限まで締め上げていた。
見てはいけないと思うのに、私は彼女のスーツのパンツの上からでも分かる、臀部と大腿部の限界の強張りと震えから目が離せなくなっていた。 心臓が激しく高鳴り、喉の奥がカラカラに渇く。 普段の威厳ある姿からは想像もつかない、激しい焦燥と羞恥に満ちた彼女の姿に、私の耳の奥が熱くなった。
「動かいないで……お願い……」 ついに彼女は壁を背にしたままその場にへたり込み、両脚をきつく交差させて顔を膝に埋めてしまった。 スーツの背中が冷や汗で黒くにじみ、彼女は小さく震えながら救助の音を待っていた。 幸いにも15分ほどでエレベーターが動き出し、ドアが開いた瞬間、彼女は私の問いかけを無視して、お尻を押さえながらビルの化粧室へと駆け込んでいった。 今でもエレベーターに乗るたび、あの密室で限界のポーズで震えていた彼女のボブヘアと、あの瞬間の異常な緊張感を鮮明に思い出す。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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