朝の通勤ラッシュと地下鉄の遅延
ジメジメとした不快な湿度に包まれた7月の朝8時過ぎ、私は満員の地下鉄の車内に閉じ込められていた。エアコンの効きが悪く、乗客たちの肌が密着し合う空間は酸欠状態に近い。 最初の異変は、主要駅の手前のトンネル内で急ブレーキがかかった瞬間だった。 下腹部にツンと刺すような鋭い尿意が走り、私の体を緊張が走った。
「信号トラブルのためしばらく停車します」というアナウンスが流れ、絶望が車内を支配する。 朝のオフィスに向かう満員電車という「絶対に出られない」檻。ここで声を上げれば、周囲の冷ややかな視線を一身に浴び、社会的な死を迎えることになる。 私は紺色のタイトなスーツスカートの中で、両膝を限界まで合わせ、内ももを激しく擦り合わせた。 黒いストッキングが摩擦で熱を帯びるのを感じながら、ヒールのつま先にすべての荷重をかけ、お尻の筋肉を限界まで締め上げた。 額や首筋からだらだらと流れる脂汗で、朝に仕上げたばかりのベースメイクが崩れ、前髪が額に不自然にはりついていく。
尿意は容赦なく波となって押し寄せ、徐々にその波の間隔が短くなっていく。 第二波、第三波が襲いかかるたび、私は吊り革を握る右手に限界の力を込め、吊り下がった姿勢のまま腰を少し浮かせて尿意を逃がそうとした。 「あと5分、あと5分で動いて……」と脳内で必死の自己交渉を試みるが、時間の進みは拷問のように遅い。 顔からは血の気が引き、きまじめな顔つきは苦痛で歪んでいた。 急いいて電車が動くことを願うが、冷たい汗が背中を伝うたび、膀胱は限界だた。 少しでも呼吸を深くすれば栓が決壊してしまいそうな恐怖が全身を支配し、私の心拍数は跳ね上がっていた。
「運転を再開します」 約15分後、ようやく電車が動き出し、次の駅のドアが開いた瞬間、私は人波をかき分けるようにしてホームへ飛び出した。 笑っている膝を手すりで支えながら、必死の思いで女子トイレの個室に滑り込んだ。 便座に腰を下ろし、すべての緊迫から解放された瞬間のあのとろけるような熱い安堵は、今でも地下鉄の遅延アナウンスを聞くたびに股の奥が熱くなる思い出だ。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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