豪雪の立ち往生と震える窓
粉雪が激しく舞い散る12月の夜8時過ぎ、北関東を走るローカル線の電車内でのことだ。豪雪の影響により、電車は最寄り駅の数十メートル手前で急停車し、そのまま完全に立ち往生してしまった。 暖房の効きが悪く、乗客たちが凍えながら待機する中、車内には私と数人の乗客しか残っていなかった。 ……その時、通路を挟んだ向かい側の席に座っていた女性客の異変に気づいた。
彼女は30代前半ほどの、落ち着いた雰囲気のスーツ姿の女性だった。黒いウールコートを膝にかけ、首元にはグレーのマフラーを巻いていた。足元は歩きやすそうなフラットパンプスを履いていたが、その足先が小刻みに、そして激しく貧乏ゆすりのように動いていた。 彼女は両手でハンドバッグを抱え込むようにして、お腹の前にピッタリと押し当て、上体を前に折り曲げていた。
彼女の脚は、タイトな黒いスラックスの中で、内ももをこれでもかと密着させ、膝を内側に折り曲げていた。 「っ、くぅ……っ」と、彼女は奥歯を噛み締めながら、小さく苦しげな呻き声を漏らしていた。 電車がいつ動くか分からない立ち往生。この静かな車内で「便意があるので降ろしてください」と言うのは、極めて困難だった。その社会的な檻が、彼女を座席に拘束していた。 メイクは寒さと便意の冷や汗でぐずぐずに崩れ、額に張り付いた前髪が彼女の焦燥を際立たせていた。 電車が止また原因や運行再開の見通しを確認するスマートフォンを握る手は白く震え、画面を操作する余裕すらなさそうだった。
彼女は、急激に悪化した猛烈な便意と戦っていたのだ。 便意の波が襲うたび、彼女はシートの上で腰を浮かせ、お尻の括約筋を極限まで締め上げていた。 見てはいけないと思いつつも、彼女の腰回りが限界の緊張で強張る様子から目が離せなくなった。 心臓が激しく高鳴り、喉の奥がカラカラに渇く。 動かいない車内で、彼女の激しい呼吸音だけが聞こえる気がした。
「まもなく、ドアコックを使用して避難誘導を行います」というアナウンスが流れた瞬間、彼女は「あ、っ……」と声を漏らし、その場に崩れ落ちるようにしゃがみ込んでしまった。 両手で股間を押さえながら顔を真っ赤にして必死に耐えている。 駅員の手引きでドアが開くと、彼女は他の客を押し分けるようにしてホームへ飛び出し、駅の女子トイレへと全速力で駆けていった。 今でも雪の日に電車の遅延を聞くたび、あの立ち往生の中で限界のポーズで震えていた彼女のスーツ姿と、あの瞬間の異常な高揚感を鮮明に思い出す。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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