体育館の鍵と冷たい床
木枯らしが吹き荒れる12月の放課後5時前、私は体育館の部室棟の鍵を返却するために、一人で薄暗い廊下を歩いていた。部活動が終わった後の校内は静まり返り、冷え切ったコンクリートの床から冷気が這い上がってくる。 最初の異変は、鍵を持って職員室へ向かおうとした瞬間だった。 下腹部にツンと刺すような、非常に強い尿意が急襲してきた。
「まずい、職員室は本館の3階なのに……」 私は焦ったが、体育館のトイレは防犯上の理由ですでに施錠されており、最も近い使用可能なトイレは渡り廊下を渡った先の本館にしかない。 鍵を返却する義務と、この寒さの中で走れば尿意が決壊するという恐怖の檻が、私を廊下の途中に立ち往生させた。 私は学校指定の紺色のウールジャージのズボンの中で、両脚を限界まで交差させ、内ももをこれでもかと擦り合わせた。 スニーカーの先を床に擦りつけ、踵を浮かせたり下ろしたりして、なんとか尿意の波を逃がそうとした。
尿意は容赦のない大波となって押し寄せる。 私は片手で体育館の重い鍵の束を強く握りしめ、もう片方の手はジャージの上から下腹部を押し潰すように強く押さえた。 ジャージの中は寒さとは異なる冷や汗でじっとりと濡れ、額には汗の粒が浮き上がっていた。 「早く、渡り廊下まで……」と脳内で必死の自己交渉をくり返すが、尿意の波は間隔を縮め、より鋭い痛みを伴うようになっていく。 急いてて歩こうとするが、一歩踏み出すたび、足の付け根に激痛が走り、膝ががくがくと笑って前に進めない。 顔からは完全に血の気が失せ、眉間に深いシワが寄り、唇は真っ白に変色していた。
「っ、ふう……!」 最大の波が襲い寄せた瞬間、私は廊下の壁に体を押し当て、内股のままその場にへたり込んでしまった。 冷たい床の感触が、余計に膀胱を刺激する。 もし今ここでジャージを濡らしてしまったら、私の部活動の思い出も友達関係もすべて終わる。 その絶望的な恐怖と、限界だた筋肉の締め付け感が、頭の中を真っ白に染め上げていった。 約3分間、その場で震えながら耐えた後、尿意が少し引いた隙を狙って立ち上がり、私は本館のトイレへと這うようにして向かった。 個室の鍵を閉め、ジャージを下ろして便座に腰を下ろした瞬間の、あの圧倒的な熱い解放感は一生忘れられない。 今でも冬の放課後の冷たい廊下を歩くたび、あの時の限界の戦いと股の奥が引き締まる感覚が蘇る。
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