渋滞のタクシーと止まった時間
冷え込みが厳しい12月の夜9時半、都内の高速道路を走るタクシーの車内でのことだ。事故の影響により、車列は完全に停止し、赤信号の尾灯が地平線の先まで続いていた。 車内には運転手と、後部座席に私と、もう一人、同じセミナーに参加した女性社員だけが乗っていた。 ……その時、隣に座っていた彼女の異変に私は気づいた。
彼女は30代前半の、知的で上品なスーツ姿の女性だった。黒い髪を後ろでハーフアップにまとめ、耳元には小さなパールのピアスが揺れていた。しかし、タクシーが止まつた直後から、彼女のその凛とした表情は急速に崩れていった。 彼女は両手でスマートフォンを握りしめたまま、お腹の前にピッタリと押し当て、上体を前に折り曲げていた。
彼女の脚は、ストッキングを履いた内ももをこれでもかと密着させ、膝を内側に折り曲げていた。 「っ、ふう……うう……」と、彼女は奥歯を噛み締めながら、押し殺した呻き声を漏らしていた。 タクシーという密閉された空間で、高速道路上という「絶対に途中で降りられない」過酷な檻。 メイクは暖房の効いた車内の熱気と尿意の冷や汗でヨレ、額に張り付いた前髪が彼女の焦燥を際立たせていた。 現在地と渋滞解消の情報を検索する画面を見る手は白く震え、携帯を握る手が汗ばんでいた。
彼女は、直前の懇親会で冷たいウーロン茶を何杯も飲んだせいで悪化した、猛烈な尿意と戦っていた。 動か無い車内で、彼女の激しい呼吸音と、時折ヒールが床と擦れて「キシッ……」と鳴る音が静かに響いていた。 尿意の波が押し寄せるたび、彼女はシートの上で腰を浮かせ、必死につま先に力を込めて耐えていた。
見てはいけないと思うのに、私は彼女のスーツのスカートの上からでも分かる、臀部と大腿部の限界の強張りと震えから目が離せなくなっていた。 心臓が激しく高鳴り、喉の奥がカラカラに渇く。 「運転手さん、次のインターまでどれくらいですか……っ」と、彼女は震える声で尋ねたが、答えは無情なものだった。 ついに彼女は限界を迎え、涙を流しながら私の肩に寄りかかるようにして全身を激しく震わせていた。 ようやく車が動き出し、次のインターを降りたコンビニのトイレへと滑り込んでいったが、その時の彼女の限界の表情は今でも忘れられない。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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