高級ホテルのバーの沈黙
冷たい雨が降る3月の夜10時前、私は高級ホテルの最上階にあるバーで、気になっている男性とデートをしていた。薄暗く上品な照明の下、グラスの氷が静かに鳴り、静粛な雰囲気が漂っていた。 最初の異変は、彼が二杯目のカクテルを注文した直後だった。 下腹部にギューッと鉄の爪で握りつぶされるような、重苦しい便意が襲ってきたのだ。
「うそ、今このムードで……?」 私の頭は一瞬でパニックに陥ったが、ここは静寂で格式高いホテルバー。 すぐに席を立ってトイレに駆け込む姿を見せれば、彼に幻滅されるかもしれないし、品位を損なうことになる。その社会的なプレッシャーとプライドという檻が、私をハイチェアの上に強固に縫い止めていた。 私はブランドもののタイトな黒いワンピースの中で、お尻の括約筋をこれでもかと締め上げ、両足の太ももをきつく交差させた。 姿勢を良く見せるためのヒールのあるサンダルが、今は括約筋への圧力を強める拷問器具のようだった。
便意の波は容赦なく、そして段階的に強さを増して押し寄せる。 第二波、第三波が襲いかかるたび、私はグラスを持つ右手を白くなるほど強く握りしめ、笑顔の裏で歯を食いしばった。 額からにじみ出る冷や汗がメイクを徐々にヨレさせ、首筋をタラリと伝い落ちるのを感じる。 「あと数分、会話が一段落するまで耐え抜くんだ」と自分に言い聞かせるが、お腹の奥でのたうち回るような鈍痛は激しさを増すばかりだった。 騒がしいいい一般の店とは違い、静まり返ったバーでは、私の荒くなった吐息が彼に聞こえてしまうのではないかという焦燥が、心拍数を異常に跳ね上げた。 行くくこともできず、私はただ彼の話に曖昧に頷くことしかできなかった。
「少し、失礼するね……っ」 ついに限界に達した私は、言い訳を言い残して席を立ち、お尻をかばうようにしながら早歩きでフロアの端の女子トイレへと急いだ。 個室に入って鍵を閉め、便座に滑り込んだ瞬間、全身の筋肉が融解するように弛緩した。 あの時の冷や汗の匂いと、極限の恥ずかしさは、今でも高級なバーの照明を見るたびに私の股の奥をキュンとさせる。
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