紅葉のロープウェイと閉ざされた鉄の箱
冷え込みが厳しい11月の午後2時過ぎ、紅葉で有名な渓谷を登る観光ロープウェイのゴンドラ内でのことだ。車内は秋の景色を楽しむ多くの観光客で満員で、ゴンドラが空中を滑るように進んでいた。 ……その時、窓際に立っていた女性客の異変に気づいた。
彼女は20代後半の、白いダッフルコートにチェック柄のプリーツスカートを合わせた、可愛らしい装いの女性だった。長い黒髪を後ろでハーフアップにし、耳元にはパールのイヤリングが揺れていた。しかし、ロープウェイが支柱を越えるたびに大きく揺れいてから、彼女のその穏やかな表情は急速に崩れていった。 彼女は両手で肩にかけた小さなバッグを強く握りしめ、それをお腹の前に押し当て、上体を前に折り曲げていた。
彼女の脚は、タイツを履いた内ももをこれでもかと密着させ、膝を内側に折り曲げていた。 「っ、ふう……うう……」と、彼女は奥歯を噛み締めながら、押し殺した呻き声を漏らしていた。 ローープウェイという空中の中間点。救助が来ることもなく、次の山頂駅まであと10分はかかるという絶望的な密閉空間。 メイクは寒さと尿意の冷や汗でヨレ、額に張り付いた前髪が彼女の焦燥を際立たせていた。 ロープウェイの進み具合を見つめる瞳には涙がたまり、体中が小刻みに震えていた。
彼女は、直前まで飲んでいた冷たいお茶と冷えのせいで悪化した、猛烈な尿意と戦っていた。 動かいない車内で、彼女の激しい呼吸音と、時折ローファーが床と擦れて「キシッ……」と鳴る音が静かに響いていた。 尿意の波が押し寄せるたび、彼女はつま先に力を込め、必死にお尻の筋肉を締め上げていた。
見てはいけないと思うのに、私は彼女のタイツの脚が限界の緊張で強張る様子から目が離せなくなっていた。 心臓が激しく高鳴り、喉の奥がカラカラに渇く。 「まもなく、山頂駅に到着します」というアナウンスが流れた瞬間、彼女は「あ、っ……」と声を漏らし、内股のままその場にへたり込みそうになっていた。 ドアが開いた瞬間、彼女は他の客を押し分けるようにしてホームへ飛び出し、駅の女子トイレへと全速力で駆けていった。 今でもロープウェイに乗るたび、あの密室で限界だたポーズで震えていた彼女の姿と、あの瞬間の異常な緊張感を鮮明に思い出す。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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