排泄物語

渓流釣りの帰り道、わしの腹が音を上げた話

投稿者: 堤防のヌシ1分で読めます閲覧 6564.0(5件)

恥をさらすが、わしの話だ。去年の秋、山の渓流へアマゴを釣りに入った。車を停めてから沢まで、歩いて50分の山道だ。朝は冷え込んでおって、息が白かったのを覚えとる。

帰り道の途中で腹にきた、もんだから困った。朝にコンビニで買った、おにぎりと牛乳の組み合わせが悪かったのだと思う。最初は軽い違和感だったが、下り坂に差し掛かったあたりで、下腹に鈍い痛みが走った。腸の奥のほうで何かがせり上がってくるような、あの独特の感覚だ。

年をとると波が来てからが早い。車まであと30分。一つ目の波はなんとかやり過ごしたが、二つ目の波で、無理だと悟ったもんだ。冷や汗が出て、足の運びがおかしくなった。膝も少し笑っとった。

獣道を少し入って、倒木の陰で腰を下ろした。ティッシュは釣り師の必需品だから持っとった。周りに誰もおらんことを何度も確かめて、それでも心臓がバクバクしとったのは、歳のせいばかりでもないだろう。あの緊張感は何度経験しても慣れんもんだ。

穴を掘る余裕はなかったが、済んだあと、枯れ葉と土をかけて手を合わせた。山には悪いことをした。だが不思議なもんで、あれ以来あの山に入ると、必ずあの倒木の方角を確認してしまう。誰にも言えん、自分だけの目印というわけだ。

釣り歴30年、野の歴もそこそこある。渓流をやる人間なら、みんな一度は通る道だと思うもんだが、どうだろうか。若い人は携帯トイレというものを持つらしい。

ええ時代になったもんだ。わしもそろそろ、あの手のものを鞄に忍ばせておこうかと思う次第だ。

あの日以来、山に入る前は食べるものにも気を遣うようになったもんだ。それでも歳を重ねると、若い頃には考えもせんかったことで足元をすくわれる。あの倒木の場所は、今でも通るたびに目印として確認してしまう。誰にも言えんが、自分の中では妙に大事な場所になっとる。恥ずかしい話だが、これも釣り人の歴史の一部だと思うことにしとる。

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