真夏の取引先ロビー
八月の焼け付くような午後二時、都心の超高層オフィスビルの1階エントランスロビーでのことだ。私はアポイントメントの時間待ちのため、ロビーに設置された革製のソファーに座って資料を読んでいた。外は35度を超える猛暑だったが、ビル内は冷房が寒いくらいに効いており、静まり返った大空間に自動ドアが開閉する音だけが静かに響いていた。……その時、自動ドアから入ってきた女性が目に入った。
年齢は二十代半ばのOL風。涼しげな白いシフォンブラウスに、上品なベージュのタイトスカートを合わせ、足元は黒の7センチヒールパンプスを履いていた。髪はハーフアップに綺麗にまとめられ、手には上品な革のビジネスカバンを持っていた。しかし、彼女が受付カウンターに向かおうとした瞬間、その歩みがピタリと止まった。
彼女は持っていたビジネスカバンを両手で抱え込み、それを下腹部に強く押し当てるようにし始めたのだ。さらに、ベージュのタイトスカートの中で、両膝をピタリとくっつけ、内ももを強く擦り合わせるような仕草を繰り返した。外の暑さから一転して冷え切ったロビーの温度差が、彼女の膀胱を急激に刺激したのだろう。綺麗に施されたメイクの隙間から、冷や汗がにじみ出て、おでこの前髪がベタりと張り付いていくのが至近距離で見えた。
受付の女性に話しかける彼女の声は微かに震え、きく噛み締めた唇は完全に血の気が引いて白くなっていた。 「あの、化粧室は……」 受付の女性が方向を示すと、彼女は一歩を踏み出そうとしたが、その瞬間に激しい尿意の波が襲ったのか、ビクンと全身を強張らせてその場に固まってしまった。
パンプスのヒールが床にカツカツと不自然な音を立て、内股のまま引きずるように立っている。両手でカバンを股間に強く押し付け、顔を真っ赤にして涙を浮かべている姿は、見てはいけないと思うのに目が離せなかった。私の心臓はうるさく鼓動を刻み、喉の渇きを覚えた。
彼女は自分の膀胱の限界と、周囲のビジネスマンたちに気づかれる恐怖との狭間で、必死に耐えていた。スカートの裾ががくがくと震える太ももの動きに合わせて不自然に揺れていた。
しばらくして、彼女はすり足のような不自然な足取りで、逃げるようにロビーの奥の化粧室へと消えていった。今でもそのオフィスビルの前を通るたび、あの時の彼女の歪んだ表情と、必死に太ももを擦り合わせていた姿を思い出して胸がゾクゾクと熱くなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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