静まり返った自習室
秋も深まる11月の午後7時、私は予備校の難関クラス用自習室にいた。室内はエアコンの風が乾燥しており、静まり返った空間にシャーペンの走るカサカサという音だけが響いていた。最初の異変は、模試の過去問を解き始めて間もない頃だった。下腹部の奥深くで、ズンと重くのしかかるような鈍い便意が静かに頭をもたげた。
「いや、気のせいだ。少し集中が切れただけだ」と自分に言い聞かせたが、その自己暗示は一瞬で打ち砕かれた。急激な冷え込みのせいか、下腹部を直接冷たい手でギュッと握り潰されるような、第一波の激しい痛みが襲ってきたのだ。
私はその日、上品なネイビーのセーラー服の上からキャメル色のカーディガンを羽織り、膝丈のプリーツスカートに黒のニーソックスを合わせていた。髪は長い黒髪を後ろで一本のポニーテールに結んでいたが、冷や汗で額の生え際が濡れて前髪が額にはりついてしまった。メイクはしていなかったが、顔からは完全に血の気が引き、鏡を見ずとも土気色になっているのが自覚できた。
自習室は咳一つ許されない極限の静寂に包まれており、今ここで立ち上がって退席すれば、周囲の視線が一斉に集中し、生理現象を察せられることになる。その重苦しい社会的圧力が、私を座席という名の檻に縛り付けていた。
便意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、括約筋は限界値に達していた。私は机の下で、ニーソックスを履いた両脚をこれでもかと密着させ、両膝を左右に激しくもじもじと揺らしながら、時折ローファーのつま先だけで床を擦って耐えた。 「あと5分、この大問を解き終わるまで……」 頭の中で残りの時間を逆算し、必死に自分と言い訳を交わしたが、お腹の激痛に耐えかねて、背中を冷たい汗がタラリと流れ落ちた。
恥ずかしさと、静かな部屋で今にも決壊してしまいそうだという恐怖が頭を支配し、心臓は早鐘のように脈打っていた。
ついに我慢の限界を迎え、私は挙手をして静かに席を立った。しかし、立ち上がった途端に腸が大きく動き、下腹部に凄まじい衝撃が走る。私はお尻をかばう極端な内股の歩き方で廊下へ出ると、突き当たりにあるトイレの個室に滑り込んだ。便座に座ってすべてを排出した瞬間の、全身の力が抜けるような熱い解放感。今でも予備校のチャイムを聞くたび、あの時の冷や汗と股の奥がすくむような恐怖を思い出す。
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