冬のスキーリフト
厳しい寒さが身に染みる1月の土曜日、午後2時前の長野県にあるスキー場でのことだ。私は友人と一緒にゲレンデの頂上へと向かう二人乗りリフトに乗っていた。周囲は真っ白な雪景色で、風が強く吹き付けており、体感温度は氷点下以下にまで下がっていた。
最初の異変は、リフトが中間地点を過ぎた頃、下腹部にツンと走った明確な尿意だった。 「あと5分で頂上に着く……それから滑り降りてレストハウスに行けばいい」と自分に言い聞かせたが、それが地獄の始まりだった。突如として「安全確認のため、リフトの運転を一時停止します」というアナウンスが流れ、リフトは空中で完全に停止してしまった。
私はその日、厚手のスキーウェアに、ゴーグルとニット帽、そして厚手の防寒用タイツを穿いていた。髪は左右に分けて結んでいたが、尿意の焦りによる冷や汗で額の生え際が濡れて前髪がはりついていた。顔からは完全に血の気が引き、メイクが脂汗で崩れて目の周りがヨレているのが自分でも分かった。
空中という、絶対に逃げ出せない極限の社会的檻が私を追い詰めていた。揺れるシートの上で両腿をぎゅっと交差させ、内もも同士を強く押し付け合って耐える。しかし、尿意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、下腹部を貫くズキズキとした激痛に耐えかねて、私はシートの上で何度も腰を浮かせ、背筋を反らせて息を整えた。
「お願いだから早くリフトを動かして……」 心の中で無意味な祈りを捧げ、凍りつく風の中で時間を確認するが、一分がまる一時間のように感じられた。恥ずかしさと、空中という場所で今にも温かいものが溢れ出しそうになっているという恐怖が頭を支配し、心臓は早鐘のように脈打っていた。
ようやくリフトが動き出し、頂上の降車場に滑り込んだ瞬間、私はスキー板を履いたまま滑り降りたが、滑る衝撃で尿道が決壊しそうになり、その場で動けなくなった。涙目でストックをお腹に押し当て、がくがくと震える足元を支えながら、這うようにしてレストハウスのトイレへ滑り込み、すべてを解放した。今でもスキーリフトの停止音を聞くたび、あの時の冷や汗の冷たさと股の奥がすくむ恐怖が鮮明によみがえる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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