中学受験の試験会場
凍てつくような2月の午前9時過ぎ、都心の私立中学校の受験会場でのことだ。広い講義室には100人以上の小学生が詰めかけており、暖房は効いていたが、独特の緊長感と冷気で満ちていた。
最初の異変は、国語の試験が始まってわずか10分後のことだった。下腹部の奥深くで、ズンと重くのしかかるような鈍い便意の第一波が走った。朝一番に緊張を和らげるために飲んだ冷たいヨーグルトドリンクが、この最悪のタイミングで私の胃腸を刺激し始めたのだ。 「試験時間はあと40分……途中退室すれば不合格になる」という強い社会的プレッシャーが、私を椅子に繋ぎ止めていた。
私はその日、小学校の制服であるグリーンのチェック柄のプリーツスカートに、白いニーソックス、そして黒のローファーを穿いていた。髪は左右に分けて結んでいたが、腹痛の焦りによる冷や汗で額の生え際が濡れて前髪がはりついてしまった。顔からは完全に血の気が引き、土気色になっているのが自分でも分かった。
机の下で、私はニーソックスを穿いた両脚をこれでもかと密着させ、椅子の角にお尻の割れ目を強く押し付けた。 「あと30分、あと大問2つ……」 頭の中で残りの時間を逆算し、必死に自分と言い訳を交わしたが、便意の第二波、第三波は容赦なく襲ってきた。お腹のゴロゴロという不快な蠕動運動が周囲に聞こえていないかという恐怖が、さらに便意を増幅させた。
恥ずかしさと、人生がかかった試験の場で今にも漏らしてしまいそうだという恐怖が混ざり合い、心臓は早鐘のように脈打ち、頭の中が真っ白になった。
試験終了のチャイムが鳴り響いた瞬間、私は答案用紙が回収されるのを待たず、不自然な内股の姿勢で教室を飛び出した。廊下の突き当たりにあるトイレの個室に滑り込み、すべてを解放した時の天国のような心地よさ。今でも静まり返った試験会場の空気を思い出すたび、あの時の冷や汗と股の奥がキュンとすくむ恐怖が鮮明によみがえる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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