スピーチコンテストの演台
秋も深まる10月の午後3時前、県立高校の講堂で行われた英語スピーチコンテストでのことだ。講堂内は高い天井から差し込む冷気で底冷えがしており、独特の緊張感で張り詰めていた。私は次の順番を待つために、舞台袖のパイプ椅子に座っていた。
最初の異変は、舞台裏で待機している時に訪れた。下腹部の奥深くがギリギリと雑巾を絞るように激しく収縮し、冷たい汗が背中を一気に流れ落ちた。緊張のあまりお昼に食べた冷たいサンドイッチが、このタイミングで私の腸内で猛威を振るい始めたのだ。 「私のスピーチまであと5分……ここで辞退すれば今までの練習が全て水の泡になる」という強い社会的プレッシャーが、私をその場に留まらせた。
私はその日、上品な紺色のブレザーにチェックスカート、黒い厚手のタイツを穿いていた。髪はすっきりと一本のポニーテールに結んでいたが、腹痛による冷や汗で額の生え際が濡れて前髪が額にはりついてしまった。メイクはしていなかったが、顔からは完全に血の気が引き、土気色になっているのが自分でも分かった。
私の名前が呼ばれ、演台の前に立った瞬間、便意の第二波、第三波が押し寄せた。タイツの中で両腿をぎゅっと交差させ、内もも同士を強く押し付け合って耐える。マイクを握る右手は白くなるほど強く握りしめ、左手は演台の端を掴んで体を支えた。
「あと3分、このスピーチが終わるまで……」 頭の中で残りの時間を逆算し、必死に自分と言い訳を交わしたが、お腹の激痛に耐えかねて、背中を冷たい汗がタラリと流れ落ちた。恥ずかしさと、大勢の観客の前で今にも決壊してしまいそうだという恐怖が混ざり合い、心臓は早鐘のように脈打ち、頭の中が真っ白になった。
スピーチが終わり、「ありがとうございました」と頭を下げて立ち上がった瞬間、私の腸は限界を迎え、一歩も動けなくなった。涙目でスカートの上から股間を強く圧迫し、がくがくと震える足元を支えながら、不自然な内股の姿勢で演台を降りた。舞台裏のトイレに滑り込み、すべてを解放した時の天国のような心地よさ。今でも英語のスピーチを聞くたび、あの時の冷や汗と股の奥がキュンとすくむ恐怖が鮮明によみがえる。
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