役員合同の幹部研修
秋晴れの穏やかな10月中旬の午後3時、本社2階の大会議室で行われた役員合同の幹部研修でのことだ。部屋全体を支配する張り詰めた空気の中、冷房が寒いくらいに効いた空間で研修が行われていた。
最初の異変は、グループディスカッションが始まって間もない頃だった。下腹部の奥深くがギリギリと雑巾を絞るように激しく収縮し、冷たい汗が背中を一気に流れ落ちた。お昼の食堂で食べた辛い麻婆豆腐が、このタイミングで私の腸内で猛威を振るい始めたのだ。 「ディスカッションはあと20分……ここで退室すれば評価に響く」という強い社会的プレッシャーが、私を椅子に繋ぎ止めていた。
私はその日、上品なライトグレーのアンサンブルニットに、黒いセンタープレスのテーパードパンツ、そして黒の7センチヒールを履いていた。髪は後ろできっちりとハーフアップにまとめていたが、腹痛による冷や汗で額の生え際が濡れて前髪が額にはりついてしまった。メイクは研修の緊張感と腸内の激痛のせいで崩れ去り、丁寧に施したファンデーションが脂汗で浮き上がっていた。
会議室という、全員が静かに話を聞いている状況で、途中退室することは極めて不作法とみなされる社会的檻が、私をその席に縛り付けていた。パンツの股間部分でお尻の括約筋を極限まで締め上げ、両脚をクロスさせてピンと伸ばした姿勢を維持しようとしたが、ヒールを履いた足元は小刻みにがくがくと震えていた。
「あと10分、このディスカッションが終わるまで……」 頭の中で残りの時間を逆算し、必死に自分と言い訳を交わしたが、便意の第二波、第三波は容赦なく襲ってきた。お腹のゴロゴロという不快な蠕動運動が周囲に聞こえていないかという恐怖が、さらに便意を増幅させた。
恥ずかしさと、職場の前で今にも決壊してしまいそうだという恐怖が混ざり合い、心臓は早鐘のように脈打ち、頭の中が真っ白になった。
研修が一時終了し、休憩の号令がかかった瞬間、私は資料を片付けるのもそこそこに、お尻をかばう極端な内股の歩き方で会議室を飛び出した。廊下の突き当たりにあるトイレの個室に滑り込み、便座に座ってすべてを排出した瞬間の、全身の力が抜けるような熱い解放感。今でもオフィスの会議室に入るたび、あの時の冷や汗と股の奥がすくむような恐怖を思い出す。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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