夏の観光バスツアー
八月の焼け付くような午後3時過ぎ、高速道路を走る観光バスの車内でのことだ。外は強烈な日差しが降り注いでおり、エアコンは効いていたが車内は独特の熱気と混雑で満ちていた。
最初の異変は、急な渋滞に巻き込まれてから10分後のことだった。下腹部の奥深くがギリギリと雑巾を絞るように激しく収縮し、冷たい汗が背中を一気に流れ落ちた。お昼のサービスエリアで食べた冷たい蕎麦とお茶が、この最悪のタイミングで私の胃腸を刺激し始めたのだ。 「次のサービスエリアまであと30分……渋滞で動けません」という運転手のアナウンスが、私の心に冷たい絶望を刻み込んだ。
私はその日、黄色のノースリーブワンピースに、薄手の白いカーディガンを羽織っていた。髪は後ろでハーフアップに綺麗にまとめていたが、腹痛による冷や汗で額の生え際が濡れて前髪が額にはりついてしまった。顔からは完全に血の気が引き、土気色になっているのが自分で分かった。
バスの車内という、絶対に逃げ出せない極限の社会的檻が私をその席に縛り付けていた。ワンピースの裾の下で両腿をぎゅっと交差させ、内もも同士を強く押し付け合って耐える。しかし、便意の第二波、第三波は容赦なく襲ってきた。
「お願いだから、早く目的地に着いて……」 頭の中で残りの時間を逆算し、必死に自分と言い訳を交わしたが、お腹の激痛に耐えかねて、背中を冷たい汗がタラリと流れ落ちた。恥ずかしさと、多くの乗客の前で今にも決壊してしまいそうだという恐怖が混ざり合い、心臓は早鐘のように脈打ち、頭の中が真っ白になった。
ようやくバスがサービスエリアに滑り込み、ドアが開いた瞬間、私は通路へ飛び出したが、歩く衝撃でお腹の底が決壊しそうになり、その場で動けなくなった。涙目でカバンを下腹部に強く押し当て、がくがくと震える足元を支えながら、不自然な内股の姿勢でトイレへ這いずり、すべてを解放した。今でも渋滞のニュースを見るたび、あの時の冷や汗の冷たさと股の奥がすくむ恐怖が鮮明によみがえる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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