帰省ラッシュの臨時新幹線
うだるような暑さが続く8月の帰省シーズン、東京駅から新大阪駅へと向かうのぞみ号の自由席車内でのことだ。帰省客や観光客で車内は身動きが取れないほどの超満員となっており、デッキまで乗客が溢れかえっていた。最初の異変は、名古屋駅を出発した直後の、下腹部に走ったツンと刺すような鋭い尿意だった。
「次の新大阪まであと50分……いや、車内のトイレに行けば済む話だ」と軽く考えて立ち上がろうとしたが、それが絶望の始まりだった。デッキに向かう通路は大きなスーツケースを持った乗客で完全に塞がれており、さらにトイレの入り口の前には、すでに4人以上の行列ができていたのだ。車内は冷房が効いているはずだったが、乗客の熱気と焦燥感で室温が非常に高く感じられた。
私はその日、黄色の爽やかなノースリーブワンピースに、薄手の白いカーディガンを羽織り、足元はサンダルを履いていた。髪はハーフアップに結んでいたが、尿意による冷や汗で額の生え際からだらだらと汗が流れ落ち、首元の襟元を濡らしていた。メイクは崩れ、ファンデーションが脂汗で浮き上がり、マスカラが滲んで目の周りが薄黒くなっているのが自分でもわかった。
新幹線の満員という、途中で降りることも動くことも困難な社会的状況が、私を肉体的にも精神的にも限界へと追い詰めていく。揺れる車内で人々と肩がぶつかるたびに、膀胱へ激しい刺激が走り、私は思わず「ひっ……」と声を漏らしそうになり、きつく唇を噛み締めた。
サンダルの爪先を床に強く押し付け、踵を交互にせわしなく上下させながら、お尻の括約筋を極限まで締め付けた。尿意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、膀胱は決壊寸前の水風船のように膨らみ、お腹の奥が痛む。 「あと30分、あと京都まで……」と、頭の中で狂ったように秒刻みの計算を繰り返すが、電車のスピードが遅くなるたびに心臓が激しく脈打ち、焦りで頭が真っ白になった。
恥ずかしさと、大勢の乗客の前で今にも漏らしてしまいそうだという恐怖が混ざり合い、耳の奥が熱くなって喉がカラカラに渇いた。
ようやく自分の順番が来て、揺れるトイレの個室に滑り込んだ瞬間、私はワンピースの裾を捲り上げて便座に座った。熱い液体が一気に放出された瞬間の、頭の芯がとろけるような凄まじい解放感。今でも新幹線のブレーキ音を聞くたび、あの時の冷や汗の冷たさと、股の奥がキュンと疼く恐怖が鮮明によみがえる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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