凍える模試の教室
冷たい木枯らしが吹き付ける12月の第二日曜日、午前十一時半過ぎの予備校の模試会場でのことだ。築年数の経った古いビルの一室は、暖房の効きが非常に悪く、窓際から忍び寄る冷気が受験生たちの足元をじわじわと冷やしていた。最初の異変は、英語の筆記試験が始まって20分が経過した頃だった。下腹部の奥深くで、ツンと刺すような鋭い尿意が走った。
「次の休み時間まであと40分……それくらいなら絶対に我慢できる」と自分に言い聞かせたが、それが終わりのない地獄への入り口だった。試験直前に緊張をほぐすために飲んだ温かい緑茶が、この最悪のタイミングで膀胱へと直接送り込まれ、膨らみかけた風船のように限界を主張し始めた。
私はその日、厚手のダッフルコートの下に、学校の制服である紺色のプリーツスカート、そして黒の80デニールタイツに茶色の合皮ローファーを合わせていた。髪はポニーテールに結んでいたが、尿意の焦燥感から全身に噴き出した冷や汗で額の髪がベタつき、首元の制服の襟がじっとりと濡れて皮膚にはりつく。ファンデーションは塗っていなかったが、顔からは完全に血の気が引き、鏡を見ずとも土気色になっているのが自覚できた。
試験中という、途中で席を立つことが極めて困難な社会的状況が、私を肉体的にも精神的にも限界へと追い詰めていく。静まり返った教室内でシャーペンの音だけが響く中、少しでも動けば周囲に怪しまれるという恐怖があった。下腹部に走る激しい刺激のたびに、私は思わず「ひっ……」と声を漏らしそうになり、きつく唇を噛み締めて耐えた。
タイツの中で両腿をぎゅっと交差させ、内もも同士を強く押し付け合って耐える。しかし、尿意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、膀胱は決壊寸前の水風船のように膨らみ、下腹部全体が引き裂かれるように痛む。 「あと20分、あと大問が二つ……」と、頭の中で狂ったように秒刻みの計算を繰り返すが、試験管が時計を見るたびに心臓が激しく脈打ち、焦りで思考が停止しそうになった。
恥ずかしさと、この静寂の中で今にも粗相をしてしまうのではないかという恐怖が混ざり合い、耳の奥が熱くなって喉がカラカラに渇いた。
ようやく試験終了のチャイムが鳴り響いた瞬間、私は問題用紙を机に置き、周囲の目も気にせずに立ち上がった。しかし、一歩を踏み出す衝撃で尿道が限界を迎えそうになり、その場でビクンと全身を硬直させて動けなくなった。涙目でプリントファイルを下腹部に強く押し当て、がくがくと震える膝を内側に折り曲げ、すり足のような奇妙な歩幅で廊下の女子トイレへと位置を移動した。
個室の便座に座り、温かい水分が勢いよく放出された瞬間の、頭の芯がとろけるような凄まじい解放感。今でも模試のチャイムを聞くたび、あの時の冷や汗の冷たさと、股の奥がキュンとすくむような恐怖が鮮明によみがえる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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