深夜高速バスの逃げ場なき路
冷え込みの厳しい1月の深夜一時半過ぎ、東京から大阪へと向かう深夜高速バスの車内でのことだ。車内はカーテンが閉め切られ、乗客のほとんどが寝静まっていたが、過剰な暖房と乾燥のせいで息苦しいほどの空気が漂っていた。最初の異変は、静岡県のサービスエリアを出発してわずか10分後のことだった。下腹部の奥深くで、ズンと重くのしかかるような鈍い便意が静かに頭をもたげた。
「次の開放休憩まであと2時間……いや、このバスにはトイレが付いているはず」と一瞬安心したが、通路を隔てたすぐ近くの席の乗客が足を伸ばして熟睡しており、通路に出るにはその人を跨がなければならないという過酷な状況だった。さらに、個室トイレの稼働ランプが「使用中」のまま赤く点灯しており、故障しているのか前の人が入ったまま出てこない状況だた。
私はその日、ゆったりとしたグレーのスウェットワンピースに、厚手のレギンス、そしてムートンブーツを履いていた。髪はリラックスできるようにシュシュで緩くまとめていたが、腹痛による冷や汗で額の生え際からだらだらと汗が流れ落ち、首元の襟元を濡らしていた。バスが高速道路の継ぎ目を越えるたびに、下腹部に激しい衝撃が走り、私はシートの上で身をよじるようにして耐えた。
便意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、お腹のゴロゴロという不快な蠕動運動がシートを通じて周囲に伝わっているのではないかと気が気でなかった。私はレギンスの上から両手で股間のあたりを強く挟み込むようにし、内ももをこれでもかと密着させながら、時折シートから腰を少し浮かせるようにしてお尻の括約筋を極限まで締め付けた。額から流れる汗が目に入ってしみるが、それを拭う余裕すらなかった。顔面は完全に土気色になり、きつく噛み締めた唇からは赤みが消えて白くなっていた。
恥ずかしさと、車内で今にも決壊してしまいそうだという恐怖が頭を支配し、心臓は早鐘のように脈打っていた。暗闇の中で、隣の乗客を起こさないように、かつ自分の尊厳を守るために必死に耐える時間はまるで永遠のように感じられた。
ようやく次のサービスエリアに滑り込んだ瞬間、私はバスが完全に停止する前にシートベルトを外し、不自然な内股の姿勢でドアへと向かった。一歩歩くごとに、お尻の奥で熱い塊が出口を求めて激しく自己主張し、涙目で顔を歪めながら外の公衆トイレへ駆け込んだ。便座に腰を下ろし、お腹の毒素が一気に流れ出た時のあの圧倒的な解放感は、今でも深夜バスの揺れを体感するたびに下腹部の奥をキュンと熱くさせる。
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