夕暮れの観光フェリー
夕暮れの海風が吹き抜ける10月中旬の日曜日、午後5時過ぎの観光フェリーのデッキでのことだ。周囲は夕日を眺める観光客で少し賑わっていたが、船内のトイレは改修工事のため一部閉鎖されており、使用できる個室には長い行列ができていた。最初の異変は、乗車してからわずか30分後のことだった。下腹部の奥深くで、ズンと重くのしかかるような鈍い便意が静かに頭をもたげた。
「次の寄港地まであと40分……いや、この船内のトイレに行くしかない」と自分に言い聞かせたが、それが地獄の始まりだった。海の冷たい風が、私の膀胱と胃腸を急激に刺激し、急激な腹痛となって波打ち始めた。
私はその日、黄色の爽やかなノースリーブワンピースに、薄手の白いカーディガンを羽織り、足元はサンダルを履いていた。髪はハーフアップに結んでいたが、腹痛による冷や汗で額の生え際からだらだらと汗が流れ落ち、首元の襟元を濡らしていた。メイクは崩れ、ファンデーションが脂汗で浮き上がり、マスカラが滲んで目の周りが薄黒くなっているのが自分でもわかった。
観光フェリーの満員という、途中で降りることも動くことも困難な社会的状況が、私を肉体的にも精神的にも限界へと追い詰めていく。揺れる船内で人々と肩がぶつかるたびに、便意へ激しい刺激が走り、私は思わず「ひっ……」と声を漏らしそうになり、きつく唇を噛み締めた。
サンダルの爪先を床に強く押し付け、踵を交互にせわしなく上下させながら、お尻の括約筋を極限まで締め付けた。便意の波は容赦なく第二波、第三波と押し寄せ、下腹部をギシギシと収縮させた。お腹のゴロゴロという不快な蠕動運動が周囲に聞こえないかという恐怖が頭を支配し、心臓は早鐘のように脈打っていた。顔面は完全に土気色になり、きつく噛み締めた唇からは赤みが消えて白くなっていた。
恥ずかしさと、大勢の乗客の前で今にも粗相をしてしまいそうだという恐怖が混ざり合い、耳の奥が熱くなって喉がカラカラに渇いた。
ようやく自分の順番が来て、個室に滑り込んだ瞬間、私はワンピースの裾を捲り上げて便座に座った。お腹の毒素が一気に放出された瞬間の、頭の芯がとろけるような凄まじい解放感。今でも船の汽笛を聞くたび、あの時の冷や汗の冷たさと、股の奥がキュンとすくむような恐怖が鮮明によみがえる。
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