桜満開の公園とお花見
春爛漫の4月の上旬の日曜日、午後3時過ぎの都内屈指の桜の名所である公園でのことだ。周囲は満開の桜を楽しむお花見客で非常に混雑しており、あちこちにレジャーシートが敷かれて大宴会が行われていた。私はカメラを手に持ち、桜の風景を撮影しながら歩いていた。……その時、近くの案内板の前で立ち往生している若い女性が目に留まった。
年齢は20代後半のOL風の女性。薄手のピンクのカーディガンに、タイトな白の膝丈スカート、そして素足に黒の7センチヒールパンプスを履いていた。髪はハーフアップに綺麗にまとめられ、手には上品な革のビジネスカバンを持っていた。しかし、彼女が案内板を見た直後、その歩みがピタリと止まった。
彼女は持っていたビジネスカバンを両手で抱え込み、それを下腹部に強く押し当てるようにし始めたのだ。さらに、タイトスカートの中で、両膝をピタリとくっつけ、内ももを強く擦り合わせるような仕草を繰り返した。外の冷たい風と、お花見で飲んだ冷たいアルコールが、彼女の膀胱を急激に刺激したのだろう。綺麗に施されたメイクの隙間から、冷や汗がにじみ出て、おでこの前髪がベタりと張り付いていくのが至近距離で見えた。
同行者の男性に話しかける彼女の声は微かに震え、きつく噛み締めた唇は完全に血の気が引いて白くなっていた。 「あの、化粧室は……」 しかし、周囲には他に逃げ場となる建物はなく、次のトイレがある公衆トイレは「最後尾」と書かれた看板を持ったスタッフが立つほどの長い列ができていた。彼女は一歩を踏み出そうとするたびに、ビクンと全身を強張らせてその場に固まってしまった。
パンプスのヒールが床にカツカツと不自然な音を立てて叩き、内股のまま引きずるように立っている。両手でカバンを股間に強く押し付け、顔を真っ赤にして涙を浮かべている姿は、見てはいけないと思うのに目が離せなかった。私の心臓はうるさく鼓動を刻み、喉の渇きを覚えた。
彼女は自分の膀胱の限界と、周囲のビジネスマンたちに気づかれる恐怖との狭間で、必死に耐えていた。スカートの裾が、がくがくと震える太ももの動きに合わせて不自然に揺れていた。
しばらくして、彼女はすり足のような不自然な足取りで、逃げるようにトイレへと向かった。今でも満開の桜を見るたび、あの時の彼女の限界の震えと、漂っていた切迫した空気感を思い出して胸がゾクゾクと熱くなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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