週末の動物園入場列
秋晴れの爽やかな10月の日曜日、午後二時過ぎの上野動物園の入場列でのことだ。周囲は家族連れやカップルで非常に賑わっており、パンダの観覧列は「90分待ち」のプラカードが掲げられていた。行列は迷路のように折り重なっており、周囲の視線から逃れることはできない。……その時、私の二つ前の折り返しに並んでいた若い女性が目に入った。
彼女は20代前半の可愛らしい大学生風で、白いフェミニンなケーブルニットに、プリーツの入ったショート丈のチェックスカート、そして黒のタイツに茶色のレースアップブーツを履いていた。髪はゆるふわの巻き髪をツインテールにしており、小さなブランドショルダーバッグを肩から提げていた。しかし、並び始めてから1時間が経過した頃、彼女の楽しげな表情に劇的な変化が訪れた。
彼女はショルダーバッグを両手で強く抱え込み、それを下腹部に強く押し当てるようにし始めたのだ。さらに、タイツを履いた両膝をぴったりとくっつけ、内ももを激しく擦り合わせるような仕草を繰り返した。園内の冷たい秋風と、入場前に飲んだ冷たい飲み物が、彼女の膀胱を急激に刺激したのだろう。綺麗に施されたメイクの隙間から、冷や汗がにじみ出て、前髪が額にベタりと張り付いていくのが至近距離で見えた。
同行者の男性に話しかける彼女の声は微かに震え、きつく噛み締めた唇は完全に血の気が引いて白くなっていた。 「あの、やっぱりトイレ行きたいかも……」 しかし、列は前後を完全に塞がれており、今さら列を抜け出すのも困難な状況だた。彼女は一歩を踏み出そうとするたびに、ビクンと全身を強張らせてその場に固まってしまった。
ブーツのヒールが地面をトントンと不自然な音を立てて叩き、内股のまま引きずるように立っている。両手でカバンを股間に強く押し付け、顔を真っ赤にして涙を浮かべている姿は、見てはいけないと思うのに目が離せなかった。私の心臓はうるさく鼓動を刻み、喉の渇きを覚えた。
彼女は自分の膀胱の限界と、周囲の大勢の観光客に気づかれる恐怖との狭間で、必死に耐えていた。スカートの裾が、がくがくと震える太ももの動きに合わせて不自然に揺れていた。
しばらくして、彼女はすり足のような不自然な足取りで、逃げるようにトイレへと消えていった。今でも動物園の行列を見るたび、あの時の彼女の限界の震えを思い出して胸がゾクゾクと熱くなる。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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