朝礼の避難訓連
遅秋の冷たい風が吹き付ける月曜日の朝、全校集会でのことだ。私は校庭の退屈な校長先生の長い話を聞きながら、早く終わらないかと地面を見つめていた。 ……その時、斜め前に並んでいた女子生徒が目に入った。
年齢は14、5歳の中学生だろう。セーラー服に黒のハイソックスを履いている。髪は二つ結びにしており、いかにも真面目そうな雰囲気の生徒だった。 冷え込みの厳しい朝で、周囲の生徒も寒さに身を縮めていたが、彼女の様子は寒さだけではない異変を孕んでいた。
下半身をせわしなく動かしているのだ。 彼女は自分の両太ももを交互に前に出すようにして、もじもじと足元を動かしている。 長い校長の話が続く中、彼女の頭はどんどん下を向き、セーラー服の裾を両手でギュッと握りしめ始めた。 青ざめた耳の後ろが、寒さとは違った極限の緊張でこわばっているのが見て取れた。彼女は猛烈な尿意と戦っている。
列を抜けて保健室やトイレに行けばいいのに、朝礼の静粛な空気と同級生たちの目線が、彼女をその場に縛り付けているのだろう。 見てはいけないと思うのに、彼女の内股が限界を迎えて震える様子から目が離せなくなってしまった。私の心臓はトクトクと早く波打っていた。
尿意の波がさらに強まったのか、彼女はついにその場にしゃがみ込んでしまった。 両膝をぴったりと揃えて抱え込み、顔を膝にうずめている。 周囲の友人が心配そうに声をかけるが、彼女は小さく首を振るだけで、立ち上がることができない。 朝礼が終わって解散の指示が出た瞬間、彼女は友人に両脇を支えられながら、おぼつなかい足取りで校舎のトイレへと引きずられるように消えていった。
今でも秋の冷たい朝風が吹くたび、あの時の彼女の震える背中と、その極限の姿を見つめていた自分自身の後ろ暗い高揚感を思い出す。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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