遮断機の手前で
高校3年の冬の朝、私はいつもの通学路を走っていた。 最初の異変は、家を出てから10分ほど経った頃の、下腹部を突き刺すような尿意だった。 「学校のトイレまであと少しだから我慢しよう」 そう思って自転車を漕いでいたが、学校の手前にある開かずの踏切りで止められてしまった。
カンカンと鳴り響く遮断機の前で、私は自転車を降りて立ち尽くした。 朝の厳しい寒風が制服の薄いストッキングを通り抜け、私の膀胱をダイレクトに冷やしていく。 「やばい、早く開いて……」 冷や汗が全身から噴き出し、立っているだけで体内の水分がすべて下腹部に集まっていくような錯覚に囚われた。
周囲には同じように踏切を待つ同級生の男子やサラリーマンが多数おり、逃げ場はない。 ここでしゃがみ込んだり、不自然な動きをすれば、一目で漏れそうだと気づかれてしまう。 私は自転車のハンドルを握りしめ、両足をクロスさせて必死に太もも同士を押し付け合った。 波が襲ってくるたびに、括約筋にこれまでにない力を込め、頭の中で神に祈り続けた。
電車の通過音が響くたび、遮断機が上がるのを期待するが、無情にも矢印は反対方向も指し示す。 「もう無理、本当に漏れる……」 涙がこぼれそうになり、口の中がカラカラに渇いていく。 漏らしてしまう恐怖と、極限状態で限界を堪えるスリルに、頭の芯がジーンと痺れるような感覚が混ざり合った。
10分ほどしてようやく遮断機が上がった瞬間、私は自転車を押すこともできず、ガニ股に近い奇妙な足取りで踏切を渡り、学校の敷地内へと駆け込んだ。 駐輪場に自転車を放り投げ、昇降口の奥にあるトイレの個室に滑り込んだ。
個室のドアを閉め、便座に座って温かい解放感に包まれた瞬間、全身の力が抜けてその場から動けなくなった。 今でも踏切の警告音を聴くたび、あの冬の朝の凍えるような空気と、限界の恐怖に震えていた股の奥の痛みを思い出す。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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