卒行式予行の朝
早春の冷え込みが厳しい朝、卒業式の予行演習が始まる直前の体育館でのことだ。椅子に整列させられた生徒たちの間には、緊張した沈黙が流れていた。 ……その時、私の斜め前に座っていた女子生徒が目に入った。
年齢は18歳、高校3年生。リボンをきっちりと結んだブレザー制服。髪はハーフアップに綺麗にまとめられ、足元は黒のストッキングにローファーを履いていた。 式の進行手順の説明が始まった頃、彼女の様子が急変した。
浅い呼吸を繰り返し、肩を小刻みに震わせているのだ。 彼女は両手で制服のブレザーの裾を強く握りしめ、背中を丸めるようにして座っている。 寒さで底冷えする体育館の中、彼女の横顔は真っ白に血の気が引き、時折「うぅ……」と喉の奥で押し殺した呻き声を漏らしていた。間違いない、彼女は急激な腹痛と便意に襲われている。
これから本格的な予行が始まるというタイミング。今立ち上がれば、式の進行を遮ることになる。 その社会的なプレッシャーが、彼女を椅子に縛り付けていた。 見てはいけないと思いつつも、彼女の太ももが限界の緊張で強張り、ローファーの踵が小さく震えている様子に私の胸は高鳴った。
便意の第二波が彼女を襲う。 彼女はついに背もたれから体を離し、お腹を抱え込むようにして椅子の端に腰掛けた。 スカート越しにも、お尻の筋肉を限界まで締め付けているのが伝わってくる。額にはじわりと汗が浮かび、メイクが少し崩れているのが分かった。 「大丈夫?」と隣の席の生徒が声をかけるが、彼女は涙目で首を振るのが精一杯だった。
式歌の練習が始まり、全員起立の指示が出た瞬間、彼女は立ち上がることができず、そのまま椅子の上で小さく丸まってしまった。 異変に気づいた担任が駆けつけ、彼女は肩を抱かれながら、腰を引いた不自然な歩き方で体育館から退場していった。 今でもピアノの厳かな伴奏を聴くたび、あの時の冷えた空気と、彼女の極限の我慢に満ちた姿を思い出す。
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※ 掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。
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