排泄物語

現在・伝統芸能の特別鑑賞と十二重の緊縛

投稿者: あおい(aoi)エピソード集2分で読めます閲覧 6014.4(5件)

つい先日のこと、私は歌舞伎の特別鑑賞会にお招きいただき、正装である重厚な「きもの」を召して劇場へと足を運びました。格調高い友禅の訪問着に、幾重もの紐や帯芯の入った豪華な袋帯をきつく締め、髪は艶やかに結い上げて鼈甲の簪を挿しておりました。大人の気品を漂わせたつもりでございましたが、劇場内の冷房が想像以上に強く、ロビーでいただいた冷たい煎茶が急速に私の身体を冷やしていったのです。演目が始まり、場内が静まり返ると同時に、私の下腹部に猛烈な尿意の予兆が忍び寄ってまいりました。

舞台の上では厳かなお芝居が続いておりますが、私の頭の中はそれどころではございませんでした。座席は列の中央付近でございましたから、立ち上がれば左右の多くのお客様の前を遮ることになり、着物の袖が他の方に触れてしまいます。伝統芸能を愛する方々の厳しい視線と、場内の静寂という社会的監獄の中で、私はただ座席に身を縮めて耐えるしかございませんでした。何層にも重ねられた着物の重みが、座った姿勢によって下腹部へとダイレクトにかかり、膀胱を容赦なく押し潰していきます。

第一波、そしてさらに強力な第二波の尿意が襲うたび、私は観劇シートの背もたれに背中を押し当て、両膝をこれでもかと密着させました。足袋を履いた足元は、草履から脱げて床の上できつく重ね合わされ、太ももの筋肉は限界の緊張でカタカタと震えておりました。長い袖の中で、着物の絹擦れの音を立てないよう静かに両手でお腹を押さえ、爪が生地に食い込むほど握りしめておりました。額や首筋からは冷や汗が絶え間なく流れ落ち、せっかくの京紅が引かれた唇を噛みしめ、呼吸を殺してただ時間の経過を数えておりました。

「あと、二十分……幕間まで持ってちょうだい……」 脳裏で繰り返される狂おしい祈りと、膀胱が破裂しそうなほどの肉体的な限界。その極限状態のスリルに、頭の芯がジーンと熱くなるような不思議な高揚感が混ざり合うのを感じておりました。ついに幕が下りた瞬間、私は周囲の余韻をかき消すように席を立ち、早歩きで化粧室へと滑り込みました。何層もの布地と紐を震える手で解き、便座に腰を下ろして一気に解放された瞬間、天にも昇るような心地よさに全身の力が抜けきってしまいました。あのお芝居の美しい三味線の音色と、幾重ものきものの重みは、今でも私の身体に刻まれた極限の我慢の記憶として、鮮明に残っているのでございます。

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掲載されている話は、読者投稿・創作をもとにした読み物(フィクション)です。実在の人物・団体・場所とは一切関係ありません。

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