大学生の夏、高原合宿のロングラン山道
大学の陸上競技部の夏季強化合宿で、長野県の標高1500メートルを超える高原道路を走っていたときのことだ。午前中のメニューは30キロのペースランニングで、私たちは何もない山林の中を貫く舗装路を黙々と走り進めていた。気温は都心より低いとはいえ、日差しは強く、水分補給用のハイドレーションパックから何度も水を口に含んでいた。
折り返し地点である15キロを過ぎた頃、最初のお腹の異変が私を襲った。下腹部をきゅーっと握られるような鈍い尿意だった。
周囲は深い森で、民家も自動販売機も、ましてや公衆トイレなど影も形もない。次の給水ポイントである5キロ先まで行けば簡易トイレがあるはずだが、そこまで私の膀胱がもつかどうかの計算が頭の中で激しく繰り返された。衝撃が加わるたびに、内臓が膀胱を容赦なく踏みつけてくる。私はお気に入りの黒いショートタイツの裾を強く引っ張り、少しでも下腹部への圧力を散らそうとしたが、全く意味はなかった。汗でべたつく手でスマートウォッチを見つめ、1キロのペースを計算するが、尿意の第2波は想像以上のスピードで私の防波堤を決壊へと追い込んでいく。
「もう無理、一歩も走れない……」と、私の脚はついに止まった。先輩たちの背中が遠ざかっていくのを見ながら、私は社会的プライドよりも生理的限界を優先せざるを得なかった。
私は左右を確認すると、道路から外れて生い茂る熊笹の藪の中へと迷わず飛び込んでいった。木々の陰に隠れ、息を荒く切らしながらショートタイツとスポーツ用ショーツを一気に膝まで引き下ろした。
冷たい山の空気の中に腰を落とした瞬間、シャーッという勢いのある音が静かな森に響き渡り、温かい湯気が立ち上った。草葉の上にしみ込んでいくおしっこを見つめながら、私は自分の限界を超えたスリルと圧倒的な快感に体を震わせていた。あの日の森の匂いと、誰かに見られるかもしれないという恐怖の混ざった高揚感は、今でも忘れられない特別な記憶だ。
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